続く平凡な日常
時刻が八時を回った頃。ようやく客も引き始めゲンも一段落着いたようである。
「ゲン。デザートにスペシャルイチゴパフェ頂戴」
「おまえ、本当好きだな」
「だって美味しいんだもん」
護は甘いものに眼がない。特にストロベリー系が好きで、ここのパフェを食べてから食後はこれを食べると決めていた。ゲンも準備してあったようですぐ出してくる。
「霞ちゃんもいる?何かデザートでも」
「いえ」
「そう?ま、欲しくなったら遠慮せず言ってくれ」
そう言うとカウンターの向かいに座り、タバコに火をつける。仕事の後のこの一服がたまらない。
「あの、さっき言ってた話って言うのは・・・」
「ああ、夕方護とも話してたんだが」
ゲンは闘技大会のことを詳しく話をした。
「そんなイベントがあるんですか。しかも、賞品があの指輪・・・」
「そうなんだ。霞ちゃんの話を聞いてる限りじゃ必要な物なんじゃないかなと思ってね。どうだい?腕試しにもなるし、出てみても損はないだろう?」
「そうね。是非出て、優勝しなければ。それなら大会まで精進しないと」
「それなんだけど、一人じゃなんだろ?で、護に相手してもらったらどうかと思うんだけど」
「護にですか?」
そこでゲンはにやりと笑う。
「霞ちゃんは知らないかと思うけど、こいつの正体はな・・・」
「ちょっと、ゲン」
護が困ったように言う。
「良いじゃないか。霞ちゃんは知る権利があるよ。とりあえずもとの姿になれよ」
護はしぶしぶもとの姿に戻る。
「これがさっき言ってた僕の姿。対しておもしろいもんでもないでしょ」
霞は少し驚いたようである。しかし次のゲンの言葉でさらに驚かされた。
「こいつさ、実はあの有名な漆黒の疾風なんだよ」
「えっ!?」
「端から見てると、全然そうは見えないと思うけどな」
「そう言う風にしてるから別に良いんですよ」
護はふてくされたように言った。
「護が、あの漆黒の疾風?」
「そ」
「意外かな?」
護が静かに言う。
「いや、ちょっと驚いただけだ」
「それなら練習相手には文句なしだろ。護は大会出る気はないそうだし、協力もするって言ってたから。こんなチャンスは滅多にないと思うよ」
「そうね。むしろこちらからお願いしたい。よろしく頼む」
護はパフェを美味しそうに食べながら快く承諾した。