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真実とは。  作者: ナトラ
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いそうろう。いや、父親でそうろう①

 そしてそれからの日々は、毎日その父親と名乗る男は昼間から酒を呑み、けいこが夕食の仕度を終える頃には眠っているという生活が続いた。朝、男は薄い毛布をぶっきらぼうに放り投げ、台所へ行きばしゃんばしゃんと自分の顔を洗う。その後、庭へ行きその様子を眺めながら縁側で酒を呑み始める。昼過ぎになり、いくらか腹が減ってくる。台所へ行き、戸棚を開くと材料がある。しかし、自分で調理する必要があるものばかりなので、面倒くさくなり、再び酒を煽り空腹を紛らわせ寝てしまう。そういう生活を送っていた。


 そうした日々がしばらく続いていた。子供達は、始めの頃は様子を見ていたが、男のことはもうすでにどうでもよくなりつつあった。なぜなら、二人が家に帰ると父親が縁側で、「ぐこう。ぐごう。」と、いびきをかいて眠っている毎日であったから。そのためけいこ達は、そういう状態にいくらか慣れてきていたのだ。最近のけいこは、「あ、またいそうろうが眠ってる。」と、男がいるところを、平気でそう言いながら通り過ぎて行くほどだ。そんなある日、いつものように酔っ払っている父親は、子供達が何も言わずに通り過ぎた時、寂しそうにこう言った。「お前ら。まだ俺を父親だと信用してないんだな。まあ、酒ばかり呑んでいる、単なる居候くらいにしか思っていないんだろう、どうせ・・・。なあ、少しは俺に頼ってきたらどうなんだい。」すると、あきとが落ち着いて、「酔っ払っているのに、よくそんなことが言えるね、おじさん。」と呟いた。「おじさん」実の息子に言われたこの言葉を、男は何度も何度も胸の奥で繰り返さなくてはならなかった。するとそのうち、子供達に対して怒りが込み上げてきた。男は、酒の力も借りたのか、あきとの首根っこをわしづかみにし、自分の方へ引き寄せた。「やめてよ、あきとに何するの。」と、けいこは驚いて叫んだ。ただ男は、「おじさんとは何だ。父親に向かって、おじさんとはいったい何なんだ。」と憤慨して言った。あきとは、男の声量と行動に驚いて、ただ身震いしていた。男が再び「何なんだ。ええ。」と、あきとに詰め寄り再び言った。あきとは小さな声で、「ごめんなさい。」と言い俯いた。それを聞いて男は、引き寄せたあきとをそのまま突き放した。そしてそれ以上の事はしなかった。突き放されたあきとは、しばらくうな垂れていた。そんなあきとに、すかさずけいこは駆け寄り「何するのよ、あんたなんかだいっきらい。」と、男に言い放った。男は、あきとを突き放した後、しばらく俯き、黙っていた。いったいどうしたものかと、子供達は様子を伺っていると、男の肩の辺りがひくひくと小刻みに動いている。そしてそれは次第に大きくなり、やがてわんわんと大声で泣きした。実の父親であるにもかかわらず、子供達に「おじさん」と呼ばれ、この家の居候と位にしか考えられていない自分自身に対し口惜しさでいっぱいだった。「俺はいったい何のために、この家にきたのか・・・。」うな垂れるようにして、男は泣き続けた。さすがに大の大人がこのようであるため、子供達はしばらくあっけにとられていた。男に対して、どう声をかけたらいいかわからず、そちらの方を見ないようにただ呆然と立ちすくんでしまうばかりであった。

 

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