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真実とは。  作者: ナトラ
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贈り物と二人の子供達②

 やがて夜になった。二人の子供達は、あの初老の男についてお互いどう思うか、それぞれ考えあっていた。けいこは夕食の準備をしていた。あきとも、寝室の準備をしながら、お互い何かを不満に思う気持ちを抑えてそれぞれ働いていた。ただあきとは、食卓に来て「お姉ちゃん、あの人。これから一緒に住むのかなあ。」とスキップしながら近づいてきて、どこか嬉しそうに姉に尋ねた。ちょうど夕食を作り終えたけいこは、そんなあきとの顔にあと数ミリという所まで近づき、「いやよ。あんな人必要ないわ。何よ。いまさら大きな顔をして、父親だなんて言われたってピンとこないわ・・・。」と、冷静に幾分大人びて答えた。実は、昼間の騒動の後、その男がいまいち反応がない子供達を前にして、「まだぶつくさ言っているのか。いいか、よく聞け。俺は、お前らの父親だ。」と顔を赤らめながら叫んでいたのだ。


 「おおい、風呂上がったぞ。お前達も入ってしまえ。」と、風呂場の方から男の声がした。もうすでにこの家の主人だと言わんばかりに、二人を「お前達」と呼ぶ始末。それを聞いたあきとは、即座に「まだいいや。」と返事をした。けいこは、テーブルの上に煮付けた魚の入った皿を、ぴしゃりと置いた。「何だ、入っちまえばいいのに。」と、その男は風呂から出てきて、腰にバスタオルを巻きつけ頭をハンドタオルで拭きながら言った。そして食卓を見て、「お、なかなかうまそうじゃねえかい。とりあえずビールでも飲むか。俺が持ってきたビニール袋に入ってるだろう。ちょっと出してくれ。」と、洗い物をしているけいこに言った。けいこは、「冷蔵庫に入ってますけど。」と、これまたぴしゃりと言い放った。すると男は、「何をぴりぴりしてやがる。なかなか気が利くじゃねえか。さすが俺の娘だ。ははは。」と、上機嫌で冷蔵庫を開けてビールを一本取り出しながら言った。けいこは、さすがに頭にきたようで「いきなり家に来て父親だなんて・・・。いったい、誰が信じると思うの。おじさん達に電話してみるから。」と、半分泣きそうになりながらも、必死に伝えた。男はその言い分に身じろぎもせず、「まあ、待てよ。俺は、別に誰に電話してもらっても一切構わないがな。ただ、向こうも実は迷惑なんじゃないのかい。どうなんだい。」と、けいこの顔を覗き込み、意味深に答えた。


 それを聞いたけいこは、何故か冷静さを取り戻していた。待てよ。そういえばおじさん達は、母の葬儀の時や、週末に家に来る時も、なんだか仕方ないからという雰囲気が漂っていたなあと、男の話を聞いてわかるところがあった。そのため、けいこは男を睨み付けてはみたけれども、少し眼を伏せて唇をかみ締めながらしばらく黙っていた。すると男は、「な。大人はよ、そういう奴も中にはいるんだよ。実際、わかるところあるんじゃねえのかい。」と、にやにやして、煙草に火をつけ言った。そしてふう、と煙を吐き出した後、続けてこう言った。「だから電話してくれたって、俺は全く構いやしねえよ。ただ、俺がお前達にここまで言っているのにさ、それでもこいつは信用ならねえというのなら、お前らのおじさんだろうが誰だろうが、お前達、勝手にどこへでも電話すればいいだろうさ・・・。」けいこは、この間のおじ達の行動や言動を思い出していた。実際、食事を用意してくれたり、金銭的にいくらか余裕が生まれたこともあったのは確かだ。ただ、あの紙切れの名を見た時の不自然さは、どうも信用ならないと今、男の話を聞いていて確信した。けいこは、「そう・・・。確かにわからないでもないな・・・。」そのけいこの様子を見て、男はさらに、にやりとして「そうだろう。わかればいいんだよ。ははは。」と、ビールを一気に飲み干した。そして煙草を大きく吸い込み、ふうと一気に吐き出した。その夜、二人はなかなか眠りにつくことが出来なかった。


 


 母からの贈り物は、やはりこの初老の男のことであるらしい。少しだけ、その男に理解を示し始めた二人。今後三人で、いったいどのような生活を送っていくのだろうか。次回、「いそうろう。いや、父親でそうろう。」お楽しみに。

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