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真実とは。  作者: ナトラ
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贈り物と二人の子供達①

 少し肌寒くなったきたある朝のことだった。けいこは、いつものように食事の用意をしていた。「そろそろあきとを起こさないと・・・。」と、目玉焼きをしたフライパンの火を止めて寝室へ向かった。いつものように敷布団からはみ出しているあきとは、首を斜めに傾けながらまだ眠っていた。けいこは、慣れた様子で「ほら、もう起きないと朝ごはんなしだよ。」と言いながら、あきとの掛布団を引っ張り言った。「ううん・・・。」と言いつつ、欠伸をしてあきとは「もう、お姉ちゃん。まだ早いよう・・・。」と、いつものように言い、目をこすりながら起きてきた。けいこは、「顔洗ったら、朝ごはんにしようね。」と、笑顔で弟に言った。あきとは「ううん。」と言いながら、洗面所へふらふらと向かって行った。


 顔を洗って食卓へ来たあきとは、まだ眠そうな顔をしていた。そして目を薄開きにしながら、姉の用意した朝食を見つめていた。けいこは、弟が席についたのを見て「さ、食べよう。」と、箸を手に取った。そしていただきますと言い、食事を始めた。あきとは自分の席についたものの、まだ時折まぶたが閉じそうになり、うつらうつらしていた。けいこはそのような弟を横目で見て少し微笑みながら、一人で黙々と食事を進めていた。すると、あきとは、むくりと上体をゆっくり起こして箸を手に持ち、しばらくするとぱくりぱくりと食べ始めた。目は半開きのままである。ちょうどその時、玄関の方でがらがらと音がした。二人ともほぼ同時に食事の手を休めて、音がした方を見ていた。数秒たった後「おおい、おおい。」と、低い大きな声がした。二人とも驚いて、いったいなんだろうと顔を見合わせていた。するとあきとは、大きな声がしてはっと目が覚めたのか、やけにさっぱりした顔で「お姉ちゃん、お客さん。」と言った。けいこは、そうみたいねと言いながら、持っていた茶碗をテーブルに置き、はあいと返事をしながら玄関の方へと向かっていった。


 玄関には、中肉中背で白髪交じりの男が腰掛けていた。その男は再び、けいこが玄関に現れる少し前に「おおい、いるかい。」と、姿に似つかぬ声を張り上げた。けいこは急いで駆け寄り、玄関にいるその男の顔を見た。やっぱり知らない人だと思ったが、なぜか不安な気持ちは幾分落ち着いていた。こんなに朝早くの来客は、身内以外では滅多にない。けいこは、その男の姿を見るとすぐさま「いったいどちらさまですか。」と、いくらか強い口調でその男に言った。するとすぐ、「どちらさまでえすかあ。」と、素っ頓狂な声がした。あきともまた、姉の後をついてきていたのである。その二人の様子を見て、初老の男は険しい表情で「何んだと、おい。どちらさまだと・・・。困ったもんだ。」と、静かに言った。それを聞いてけいこは、「困るのはこっちの方だよ。」と、心の中でぶつくさ言った。この男は、ひょっとして母に用事があるのかもしれないと、とっさに思ったけいこは「あのう。母は先日亡くなりましたけれども・・・。」と、一応伝えた。すると男は、「・・・。」少しうつむき黙った。しばらくして、「まあ、ちょっと休むとするか。悪いがお前ら、この荷物を奥まで持って行ってくれ。」と男は、ぶっきらぼうな口調で二人に言った。それを聞いたけいこは、とたんに何かが吹っ切れたかのように、「知らない人は、家に入れません。」と、きっぱりその男に向かって言った。そしてあきとも「はいれましえん。」と、大きな声で続けた。すると男は、「はあん、なんだお前ら。俺はお前らの母親も、お前らも知っている。だから安心しろ。いいからとにかく少し休ませろ。疲れているんだ、俺は。」と言い靴を脱ぎ、よっこらしょと言いながらゆっくり立ち上がり、居間へとのさのさ向かっていった。二人は、「何だ、このおじさん」とそれぞれ思い、大きな声を張り上げようとした。しかし、ここで騒ぐとかえって危険であるような気がした。けいこは、あきとにそっと口元を塞ぐしぐさをして合図を送った。意外と姉の言うことは聞くようになったあきとは、姉と同じようなしぐさを真似た。母の知り合いのような事を言っているし、とりあえずここは、この男の言うようにしておこう、と二人は目で確認しあった。


 荷物は大きな風呂敷と、小さなスーパーの袋の一つづつなので、それぞれ引っ張るように居間へと運ぼうとした。けいこは風呂敷を引っ張りながら持ち上げてみようと、少し宙に浮かした。その時、一枚の写真が二人の前にひらひらと舞い降りた。けいこはその写真を、何気なく拾い上げ覗き込んだ。そこには一人の若い女性が、赤いヘルメットをかぶりバイクにまたがって親指を突き立てている様子が写っていた。なんともいさましく、しかしどこかで悲しそうな眼をしているのが印象的だった。居間へと歩きながら、何気なく後ろを振り返った男がそれに気づくと、けいこの手からそれを無理やりひったくるようにして、「いいからさっさと運びやがれ。」と、怒鳴りつけるように言った。けいこは、ぶつぶついいながらまだ途中だった荷物を、しぶしぶ引っ張って居間へと運んだ。その男は顔を幾分赤く染めながら、その写真をそそくさと着ている上着の内ポケットへ突っ込んだ。

 突然、家に上がりこんできた初老の男。いったい何者なのであろうか。次回、「贈り物と二人の子供達②」お楽しみに。

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