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清冷の天河と砧の響き

作者: セフィロト
掲載日:2025/11/19

満天の星河あまのがわは、まるで手が届くかのように、広漠とした荒涼の空に懸かっている。その中の満月は殊更に白く輝き、その光は一点の塵もないほどに澄みきっていた。

突然、遥か天の川の方角から、高く凄まじい雁の鳴き声が響き渡り、鳥たちは人文字となって夜空を貫いていった。

それから間もなく、西側の路地から「トントン」という音が途切れ途切れに聞こえてくる。それは、隣家の女性が石の砧の上で冬着かんいを打つ音だ。そのリズムの抑揚は、頭上の清冷な星空と、ある種の奇妙な対照をなしていた。

隅に立つ老いたえんじゅの木は、その枝がごつごつと骨ばり、葉はとうに落ち尽くしている。その枯れた枝の間に、数羽の遅れて帰った疲れ果てた鳥たちが、ようやくねぐらを見つけていた。

御殿の内部、微かな油灯あぶらひの光の下で、老禅師・慧遠えおん結跏趺坐けっかふざして座っていた。

慧遠大師は、数名の参拝客(香客)に対し、奥深い仏法を説いている。その声は低く穏やかで、山中の泉のようにゆっくりと流れながら、「色即是空、空即是色」の梵音妙理を説き明かしていた。

その座は、夜が明け、星と月が交代するまで、続いたのであった。

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