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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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97/131

p86

医務室の薄い灯りが、壁に鈍い光を落としている。

ヴァルターとフリンツは、薬品と油の匂いが混じり毛布にくるまれ、振動に震えるベッドに腰かけていた。


扉が開き、艦長が入ってきた。

背の高い男で、濡れたコートの肩に塩の白い跡が残っている。

短く刈った金髪が灯りを受けて鈍く光り、灰色の目が二人を順に見下ろした。


「U-22へようこそ。艦長のハルトマン大尉だ」

声は低く、金属の壁に吸い込まれるように響いた。

手には、二人の身分証がある。


「照会は取れた。君たちが国防軍の兵であることは間違いない」

艦長は身分証を指先で軽く叩いた。

「ただ……包囲されているはずの305連隊の伍長が、情報部(アプヴェーア)と仲良く密輸船に

乗っていた理由は不明のままだが」


フリンツが、かすれた声で答えた。

「偶然です。捕虜になって、後方へ送られる途中に一緒になって」

毛布の下で肩がわずかに震える。

「あとは……さっき説明したとおりです」


艦長の眉がわずかに動いた。

信じていないわけではないが、納得している様子でもない。

探るような視線がベッドと身分証を交互に見たあと、艦長は短く息を吐いた。


「まあいい。しばらくは、ここで休め」


扉が閉じると、医務室には再び薬品の匂いと、浅い呼吸だけが残った。



木箱が破片を防いだおかげか、爆発による重篤な傷は無く、ヴァルターはその日のうちに歩けるようになった。

狭い通路には油と金属の匂いが混じり合い、壁に触れると振動が骨にまで伝わってくる。手すりを伝いながら、すれ違う乗員の顔には皆どこか同じ影が落ちていた。


「食堂」と呼ばれる前部居住区の片隅に近づくと、乗員たちの低い声が耳に入る。

「セヴァストポリの補給船、また遅れてるな」

「基地の連中が言ってた。救援隊は引き返したらしい」

「6軍は見殺しか。ロストフが陥ちたら、俺たちだって……」


声を張るものはおらず、疲れ切った兵士の本音が漏れ出したような響きだった。

ヴァルターが姿を見せると、乗員たちは自然と口を閉ざし、話題を変える。


「どうもルーマニアまで降りられない様だ。補給も全部あっちで組んでるらしい」

パンをちぎるフリンツの声には明るさが滲んでいた。


「まあ、補給司令部があれば輸送も手配できる。思ったより早く戻れるぞ」

安堵の色でスープを(すす)るフリンツを、ヴァルターは無言で見つめた。

胸の奥で、別の選択肢が静かに形を成していくのを感じながら。


-艦長を説得に行く→P.88

-方針に従う→P.87


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