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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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79/92

p75

門の前に立ったフリンツは、制服の襟を正しながら門番に声をかけた。

「Срочное сообщение от командования Донского фронта. Позовите командира.」


門番は一瞬動きを止め、無線機に手を伸ばしかけた。

「Не пользуйся связью. Если не хочешь быть наказан за утечку, лучше не рискуй.」

フリンツが低く言い放つと、門番は顔を強張らせ、敬礼して奥へ駆けていった。


やがて、雪を踏みしめる足音とともに、一人の将校が現れた。

赤地に金星の襟章。階級は中尉か。

顔には夜通しの緊張が刻まれ、目の奥に疲労と警戒が滲んでいた。


「...В чём дело?」


フリンツが無言で差し出した身分証を受け取ると、中尉は確認しながら封筒の赤い印章に目を留める。

「Задание секретное, от Донского фронта. Подробности — только в штабе. Прошу провести нас без лишнего шума.」


中尉はしばらくフリンツの顔を見つめていたが、やがて短く頷いた。

「...Следуйте за мной.」


案内されたのは村の中央にある大きな建物だった。外壁は砲煙で黒ずみ、窓には

板が打ち付けられていた。かつての村長の家か、役場だったのかは判然としない。

中は食堂を転用したような空間で、粗末なテーブルの上には地図が広げられ、数人の将校が囲んでいた。空気は湿り、灯油と冷えた煮豆の残り香が混ざっていた。


フリンツが一歩前に出て尋ねる。

「Какова обстановка?」


地図の端に立っていた副官らしき男が、疲れた顔で答えた。

「Противник уже занял противоположный берег. Наши позиции постепенно отступают. Переправа под угрозой.」


別の下士官が不安げに口を開いた。

「Бойцы держатся, но если немцы прорвутся из города и ударят с фланга... что тогда?」


「Не беспокойтесь.」

フリンツは全員の視線を受け止めたあと、打ち合わせの通り、静かに言った。

「Второй гвардейский корпус движется с юга. Он соединится с танковыми частями и закроет брешь вдоль реки. Ещё один гвардейский танковый корпус обходит с тыла, чтобы отсечь выступ немцев.」


将校たちは顔を見合わせた。

期待と疑念が入り混じった空気が、静かに広がるのが感じられた。

「Успех подкрепления зависит от своевременной передачи информации. Нам нужно место, откуда видно весь передний край.」


副官は一瞬ためらう様子を見せたが、フリンツの口調に押されるように、若い兵士に目配せした。

「Проводи их. Наблюдательный пункт на южном холме.」


フリンツとヴァルターは兵士に導かれ、村の外れを抜けて雪に覆われたなだらかな丘を登った。風は冷たく、雪は膝下まで積もっていた。

丘の上には粗末な観測壕があり、土嚢と木材で組まれた壁の隙間から川の向こうまで見渡せた。


やがて遠くに黒い煙が立ちのぼり、断続的な銃声が風に乗って届いてくる。

双眼鏡を覗いたヴァルターの目に、ドイツ軍の車列が雪原を押し進む姿が映った。


「始まったな……」

リンツは双眼鏡を握り締め、息を呑んだ。

雪原を切り裂くように戦車列が前へと押し出し、履帯が軋むたびに地面が沈む。

先頭の装甲が塹壕の縁を打ち砕き、ソ連陣地は次々と後退を余儀なくされて崩れていく。

歩兵が慌てて散開し、号令は途切れがちで、白煙と粉塵の合間に逃げ惑う人影が小さく見える。銃火が断続的に追い立てるように鳴り、雪に残る足跡は後退の方向へと延びていった。


ドイツ軍の前進は勢いを増し、押し返される側の防線を確実に浸食している。

「いいぞ、すぐに下へ――」

身を乗り出すフリンツの肩を、ヴァルターが引き戻した。

「待て。見ろ」


その指差す先、川の奥から新たな部隊が現れた。雪を蹴って進む戦車の列、赤い星章のついた装甲車、そして歩兵の波。


「……まさか、本当に来たのか」

フリンツが呟いた。


ソ連側の増援だった。第2親衛軍か、それとも別の部隊かは分からない。

だが、確かに増援は現実になっていた。

ドイツ軍は前進を止め、やがて後退を始めた。

砲声が遠ざかり、煙の向こうに車列が引いていく。

フリンツが立ち上がろうとするのを、ヴァルターが再び制した。

「やめろ。今は動くな。ここで目立てば、どちらに撃たれるか分からん」


そのとき、二人に向かって案内役の若い兵士が雪を蹴って駆け寄ってきた。

顔は紅潮し、息は白く、目には涙が浮かんでいる。

「Это вы вызвали подкрепление, да? Оно действительно пришло! Эти танки — они наши!」


兵士はフリンツの肩を掴み、感極まったように抱きついた。

「Мы уже думали, что всё — конец… Но вы нас спасли. Правда, спасли……」



フリンツは一瞬硬直したが、すぐに笑顔を作って肩を叩いた。

「Прости, но у нас есть задание. Ещё увидимся.」


兵士は名残惜しそうに敬礼し、仲間のもとへと駆けていった。

雪を踏む足音が、まだ遠くで鳴る銃声にかき消されていく。


ヴァルター達はそのまま村の出口へ歩き出す。建物の窓や戸口から兵士たちが次々と顔を出し、前線の方角を指差す者もいれば、帽子を脱いで天を仰ぐ者もいた。

雪は止んでいたが、空はまだ鉛色に曇り、風が頬を刺すように冷たい。

道端には砲撃でえぐれた地面が凍りつき、壊れた荷車が傾いていた。


指揮所の煉瓦壁の陰、砲撃で潰れかけた厩舎の前で、フリンツが立ち止まる。

屋根は中央から折れ、梁が斜めに突き出し、壁の一部は吹き飛んでいた。

黒ずんだ干し草や土嚢が散乱し、兵士たちは負傷者の手当てに追われていた。


入り口には数頭の馬が折り重なって倒れ、すぐそばに脚を引きずり、白い息を吐きながら、苦しげに首を振っている。一方、奥の柱に繋がれていた二頭は慌ただしく鼻を鳴らしていた。

毛並みは泥と雪に(まみ)れ、筋肉は震えているが、四肢はかろうじて健やかに見えた。


フリンツは足元の瓦礫を踏み越え、慎重に近づいた。

鼻面に手を伸ばすと、栗毛の方が短く息を鳴らしたが、逃げようとはしなかった。


「こっちの二頭はいける」

フリンツは、柱の手綱を解きながら言った。

「南の林を抜ければ、増援部隊の進路に出られる。今ならまだ間に合う」


ヴァルターは馬小屋の扉に手をかけたまま、外に視線を向ける。

膝をついて止血帯を巻く者、担架を探して走る者、呻き声に顔をしかめる者。

誰もこちらに注意を払う余裕はないようだ。

風が吹き抜け、馬のたてがみが揺れた。


- フリンツに賛同する→P.76

-合流はあきらめ、馬でこの場から逃げるよう説得する→P.77

-隠した自動車のところまで戻ろうと言う→P.78


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