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ヴァルターの視線の先に、小さな物資置き場がある。
扉は開いたままで、中には医官用の装備らしきものが雑然と積まれている。
慌ただしい空気の中、注意を払う者はいないようだ。
ヴァルターは、声を潜めて言った。
「関係者に化けて、死体の搬出票を奪うのは?」
フリンツが眉を寄せる。
「書類の形式にもよるが……署名以外に特殊な印章が要る場合はどうする?」
「それも奪うか、医者を脅すか」
フリンツは一瞬だけ考え込んだが、やがて決意を込めてうなずく。
二人は物置の扉へと駆け寄った。
フリンツが着ていた外套を脱ぎ捨てる間、ヴァルターは棚から先ほど軍医が身に
着けていた、赤紫の縁取りの外套を引き抜く。
凍てついた布の温度を感じる暇もなく、フリンツがそれを素早く引っ掛ける。
ヴァルターは外に目を向けたまま、通路の動きと声に注意を払っていた。
誰かが近づいてくる気配はない。
フリンツがもう一枚の上着に腕を通したその直後。
物置の奥の扉がきしみを立てて開き、両手を擦り合わせながら現れた兵士の視線が、まっすぐ二人に止まる。
兵士が銃に手をかけた瞬間、ヴァルターの指が反応した。
発砲音が低く空気を裂き、兵士は呻きを上げて倒れた。
ほどなく、数人の兵士が部屋に駆け込み、二人を囲むように銃口を向ける。
「拘束しろ!」
命令を合図に、二人は床に押し倒される。
背中に食い込む膝の重さと、腕をねじ上げられる鋭い痛みの中で、ヴァルターは
自分たちを待ちうける、凄惨な尋問の光景を思い描いていた。
END




