7/131
p7
ヴァルターは地下には降りなかった。
代わりに、廃屋や瓦礫の陰を転々としながら、戦闘を避けて数日間を過ごした。
食事はできる限り切りつめ、水は雪を溶かしてしのいだ。
夜は冷え、昼は煙と灰が漂っていた。
砲撃は絶えなかった。
だが、それだけではない。
乾いた破裂音に混じって、断続的な銃声が響く。
叫び声。命令の怒鳴り声。
敵の攻勢が本格化したことが、音でわかった。
ある日、すぐ近くの建物で戦闘が始まった。
窓ガラスが砕け、火薬の匂いが風に乗ってきた。
ヴァルターは息を殺し、裏手の廃屋へ退避した。
そのとき、崩れた壁の向こうから、かすかな呻き声が聞こえた。
ヴァルターは身を低くし、割れた窓枠の隙間を覗く。
壊れかけた木製のベッドに背を預けるように、若い兵士が座っていた。
片膝を立て、不自然に伸びたもう一方の脚から、熟れたプラムのような染みが
床に広がっている。
帽子の中央には赤い星。
ヴァルターはしばらく立ち尽くした。
彼を連れて出れば、投降の意志を示せる。
だが、赤軍の捕虜になっても、命が助かる保証はない。
- 負傷兵を連れて投降する →P.8
- 負傷兵を置いて移動する →P.9




