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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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64/92

p62

仰向けの死体を見下ろしながら、ヴァルターが低く言った。

「どうする?」


返事はない。


ヴァルターはしゃがみ込み、上着の内側を探って小さな包みを引き抜いた。

紙を開き、中に残ったわずかな脂身サーロをナイフで押し切って、人数分に分けていく。


薄い欠片を口に入れ、水をひと口ずつ飲んだあと、一行は無言のまま廊下へ出た。


吊られた裸電球が、濁った白を廊下に落としている。

その薄い明りの中を進むうち、濡れたコンクリートに、血のような紅い点が浮かび上がった。

それらは廊下の端で向きを変え、階下へと吸い込まれるように続いている。


階段を降った先には、異様な空間が待っていた。

厚いガラスに仕切られた、無機質な大部屋。

血痕はその奥へと吸い込まれている。


「おい! クラウス!」

躊躇なく進む3人目を追うように、ヴァルターたちは見張りを残し、広い部屋へ足を踏み入れる。

 

電灯が照らす壁には、掻き毟ったような無数の痕が、白く乾いたコンクリートに刻まれていた。

天井には、等間隔に開いた小さな穴。


「ガス室……」

4人目が(かす)れた声で呟いた。

「……がす、何だって?」

誰かが問い返した直後、

 

ギギギ……と不吉な金属音が静寂を裂いた。

弾かれたように振り返ったヴァルターたちの目の前で、重厚な鉄扉がゆっくりと、閉じていく。


「戻れッ!」

 叫びも空しく、ガチャン、という非情な金属音が密室の完成を告げる。

外のハンドルが回される鈍い振動が、扉越しに伝わった。

 

男たちが肩をぶつけるが、鉄扉もガラスもびくともしない。


ガラスの向こうでは、痩せた男が喉を掻き切った見張りの遺体から、弾薬ポーチを剥ぎ取っている。

粗末な農夫の服に、親衛隊の外套を羽織ったその姿は、まるで墓掘り人のようだった。


足もとで青白い結晶の残滓が、陽炎のように揺れる。

「通気口だ! ここから外に…」


屈みこんだ2人目の手に、冷たい鋼線がふれた。



閃光と、肺を圧迫する爆風が音を奪い去り、熱を帯びた赤黒いつぶてが撒き散る。

鉄錆と焼けた肉の臭気が立ち込める視界に、ひしゃげた認識票と栗毛の生えた頭皮がぼとりと落ちた。

「――――!!」

水に潜った様にぼやけた音の中、3人目がガラスの(ひび)を銃床で突き破り、開いた隙間から銃口をねじ込む。


「地獄へ落ちろ! 豚共が!」


MP40が火を噴き、9mm弾が墓掘りの背中を執拗に(えぐ)る。

ボロ布のような外套が内側から踊り、血飛沫が壁を濡らした。

支えを失った身体は、冷たいコンクリートに崩れ落ち、ピクリとも動かなくなった。


→P.68






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