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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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63/131

p61


「……え?」


それは音よりも先に、肌を刺すような圧迫感として訪れた。

遠く、空の向こう側の、ヒュルルルル……と、空気を切り裂く高い音が、急速に、暴力的な低音へと変わっていく。


次の瞬間、世界が裏返った。


凄まじい閃光が網膜を焼き、直後に鼓膜を蹂躙する轟音が炸裂する。

地面が跳ね、身体が数センチ浮き上がるように感じられた。


一発ではない。二発、三発。

降り注ぐ鉄の雨が、石造りの建物をおもちゃの積み木のように粉砕していく。

熱風が頬をなで、舞い上がった土砂と瓦礫の破片が、ヴァルターの背中にバラバラと降り注いだ。


(砲撃支援の……マーキング……!)


ヴァルターは頭を抱え、ただ地面にへばりついた。耳鳴りだけが頭の中でキーンと鳴り続け、自分が叫んでいるのか、いないのかさえ分からなくなった。




やがて衝撃が止み、代わりにパラパラと砂利の落ちる乾いた音だけが残った。

視界は真っ白な粉塵に覆われ、数メートル先も見えない。


ヴァルターは、気道を刺すような灰を咳き込みながら、ふらふらと立ち上がった。


膝が笑い、視界がぐらつく。

崩落した建物の方へ、吸い寄せられるように足を運んだ。


鼻をつくのは、焦げた木材と火薬、そして鉄の匂い。

つい数分前まで兵士たちが酒を酌み交わしていた部屋は、家と人体の残骸が散らばる巨大なクレーターの一部と化していた。


(……)


呼びかけようとしたヴァルターの前で、熱気を含んだ瓦礫がわずかに動いた。


粉塵がぱらぱらと落ち、崩れた梁を押し除けるようにして、暗がりの奥から誰かが這い出てくる。


最初に見えたのは、埃と返り血にまみれた顔だった。

肺の粉塵を吐き出すような、荒い息遣い。

脇に抱えたソ連兵のこめかみにルガーを押し当て、瓦礫からゆっくりと身を起こす。


とっさに地下室に逃げ込み、砲撃を凌いだのだろう。

軍曹の赤黒い顔には、凄惨な笑みがはりついていた。


「……奴隷ども(スクラーヴェン)が。やってくれたな」


吐き捨てるように言いながら、軍曹はヴァルターを一瞥した。


――飛びかかる力など残っていない。

そんな判断を表情に(にじ)ませながら、銃口をゆっくりこちらへ向ける。


引き金にかかる指の、ほんの短い動きが、やけに大きく見えた。


その瞬間――


人質になっていた兵士の右手が動いた。

軍曹の死角、瓦礫に隠れた腰元から引き抜かれたのは、鈍く光るエヌエル・ナイフ。


「が……っ!?」


兵士は身をよじるように反転し、軍曹の喉元へ深々と刃を突き立てた。

噴き出した鮮血が、白み始めた朝の空気に赤い霧を撒き散らす。

銃声は響かなかった。ただ、軍曹の喉から漏れる「ヒューッ」という虚しい風切り音だけが、静寂を切り裂いた。


軍曹の身体から力が抜け、人形のように瓦礫の上に崩れ落ちる。



粉塵の中、兵士は荒い呼吸をしながら立っていた。

手にしたナイフを震える指で取り落とし、返り血を拭うこともせず、ヴァルターを見つめる。

そして、足元の瓦礫を蹴り飛ばすようにして駆け寄ってきた。


「……!」


声にならない声。

ヴァルターはその肩を掴み、兵士もまた、折れそうなほど強く彼にしがみついた。


瓦礫の中で、二人はしばらく抱き合っていた。

冷え切った朝の空気の中、

互いの体温だけが、確かな現実だった。


→P.67

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