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ヴァルターは、崩れかけた階段の脇を登って一階へ戻った。
砲音は続いていたが、家の中は静まり返っている。
廊下の奥に、もう一つ部屋があった。
扉は半ば外れ、床にはガラス片と紙屑が散らばっている。
彼は足音を殺しながら中へ入った。
部屋には、脚の折れた机が残されていた。
天板は傾き、上には紙屑、ライター、折れた鉛筆が散乱している。
引き出しは開け放たれ、内側には破れた封筒と、インクの染みた布切れ。
ヴァルターは壁の収納棚に手をかけ、ゆっくりと扉を開けた。
中には、毛布と薄汚れたシーツ。
壁の隙間にも手を伸ばしたが、冷たい煉瓦と埃しか触れなかった。
机の裏、椅子の座面、床板の割れ目──どこにも地図やコンパスのようなものは見当たらない。
この家が何かの拠点だったとしても、記録は持ち去られたか、最初から存在しなかったのかもしれない。
窓は割れ、外の灰色の空が覗いていた。
風が吹き込み、部屋の空気が冷たく揺れる。
もう得られるものはなさそうだ。
ヴァルターはコートの襟を立て、階段を下りた。
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