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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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59/108

p58

ヴァルターは梯子を静かに登り、頭上の鉄蓋に手をかけた。

錆びついた取っ手を握り、ほんのわずかにずらす。


「ギ……」と小さく鳴ったが、それ以上は音を立てないようそっと押し上げた。

冷たい外気が流れ込み、夜明け前の薄明かりが縦穴を照らす。


灰色の空の下、崩れた建物の影に人影が立っているのが見えた。

軍服を着た見張りが一人、銃を肩にかけ、瓦礫の向こうを警戒している。


慎重に蓋を閉じながら、ヴァルターは声を落として言った。

「ロシア語はできるか?」



フリンツの合図で、ヴァルターは乾いた材木に重ねた黒い紙に、火をつけた。

炎はすぐに黒煙を吐き出し、もうもうとした煙が縦穴を昇っていく。


煙が鉄蓋の隙間に届いたところで、フリンツが蓋を押し上げ、外に叫んだ。

「Пожар!」


声に応じて、周囲の兵士たちが慌ただしく駆け寄ってきた。

何人かが蓋の周囲に集まり、煙にむせながらもフリンツや後から続いたヴァルターに手をとって、地上へ引き上げる。


別の兵士たちが怒鳴り合いながら、近くの地下口へ走った。

怒声と足音が交錯するなか、二人は自然な足取りで近くの建物の影へと紛れ込む。


背後では、遠くの市街地に向けて砲撃が始まったらしく、

鈍い発射音と、数秒遅れて響く爆発の衝撃が空気を震わせた。

瓦礫の隙間から立ち上る黒煙が、灰色の空に溶けていく。



建物の奥に身を潜めながら、フリンツが奪った赤軍兵士の軍隊手帳を開いた。

煤で汚れたページをめくり、文字を目で追うと、低く読み上げる。

「第112狙撃兵連隊。タラス・ドロホヴィチ。階級は二等兵」


ヴァルターが、自分の外套の内ポケットからもう一冊の手帳を取り出す。

フリンツはそれを受け取り、ページをめくる。


「こちらは……第87迫撃砲中隊。リュボフ・マリチェンコ。階級は一等兵」


フリンツは二冊の手帳を見比べ、眉をひそめた。

「……どちらも一般兵だな。通行証も特別任務の記録もない。

部隊章や任務内容を照合されれば、それまでだ」


ヴァルターは窓の隙間から外をうかがい、唇を噛んだ。

「これだけじゃ、陣地の外に出られないということか」

フリンツは手帳を閉じ、声を潜める。

「ああ。検問を抜けるには、他にとっかかりが要る……」



- 通行所を持っている人間を探す →P.60

- 病人のふりをする →P.63

- 後方に移動する部隊に紛れる →P.65




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