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「先に行け。俺が後ろを見ている」
ヴァルターは短く言い、フリンツの背を支えた。
フリンツは血の滲んだ肩を押さえ、頷く。
腕に力が入らず、梯子を掴む動きはぎこちない。
ヴァルターは腰を落とし、全身で彼を押し上げる。
荒い息と、衣服が擦れる音が響く。
蓋が持ち上がり、冷たい外気が通路を抜けた瞬間──
「カラン」と小石が転がり落ちる。
フリンツの足がもつれ、体重がかかった瓦礫が崩れたのだ。
その音に、外の闇が反応した。
金属が引き絞られる鋭い音。
次の刹那、銃声が黎明を裂いた。
フリンツの身体が大きくのけぞり、出口の縁に叩きつけられる。
血が飛び散り、彼の手が虚空を掴む。
ヴァルターは咄嗟に手を伸ばしたが、間に合わなかった。
フリンツは崩れ落ち、通路の床に重く倒れ込む。
外ではソ連兵の足音が近づき、銃のボルトを引く音が重なる。
ヴァルターは後退するしかなかった。
だが、狭い通路に逃げ場はない。
外から金属の硬い音が響いた。
「チン……」と転がる小さな影。
それが何かを理解するより早く、
通路全体が白い閃光に呑み込まれた。
END




