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暗闇の中、フリンツは壁に手を伸ばした。
ざらついたコンクリートの感触が、かろうじて進む方向を保証してくれる。
「これなら迷わずに行ける」──二人は壁を伝って慎重に歩を進めた。
だが、壁際は安全ではなかった。
砲撃で崩れた瓦礫が積み上がり、わずかな振動で崩れ落ちる危うさを孕んでいた。
指先が石片に触れた瞬間、乾いた音が響き、積み重なった瓦礫がずるりと動いた。
次の瞬間、頭上から重みが降りかかる。
ヴァルターは反射的に身を引いたが、フリンツの肩に大きな石材が直撃した。
呻き声が闇に吸い込まれ、二人は必死に押し返そうとする。
しかし、崩落は止まらず、瓦礫は雪崩のように通路を塞いでいった。
やがて、冷たい石の重みが胸を圧迫し、呼吸が奪われる。
暗闇の中で互いの姿は見えない。
ただ、瓦礫の隙間から漏れるかすかな粉塵の匂いと、遠ざかる意識だけが残った。
END




