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ヴァルターは身を低くし、床に手をついて匍匐を始める。
ガスは上層に濃く溜まっている──
低い姿勢なら、呼吸は幾分か楽になるはずだった。
冷たいコンクリートの感触と、瓦礫の鋭い破片が掌を裂く。
膝も擦りむけ、衣服はすぐに湿り、重くなった。
闇の中、もはや通路の分岐を気にする余裕もない。
ただ前へ、前へと進むうちに、方向は完全に失われていった。
やがて、空気はさらに重くなり、喉が焼けるように痛む。
低い姿勢を保ったまま、ヴァルターは咳き込み、肺が痙攣するように縮む。
フリンツの気配も遠のき、音も匂いも、すべてが霞んでいく。
最後に感じたのは、瓦礫に額を打ちつけた鈍い痛みと、冷たい床の感触だった。
そのまま意識は闇に沈んでいった。
END




