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ヴァルターはライターを取り出し、火をつけた。
見回すように壁際に寄せると、垂れ下がった紙の端がぼっと赤く炎が上がる。
「気を付けろ。そいつは燃えるぞ」
フリンツが低く警告した。
ヴァルターは火をあてないよう注意しながら、指先で紙をつまんで剥がした。
黒ずんだ紙はべたつき、剥がすたびに指に跡が残る。
いくつかをまとめて引きはがすと、彼は「照らしてくれ」と言ってライターをフリンツに渡した。
両手を使い、剥がした紙を金属パイプの破片に巻きつけ、布片で柄を補強する。
即席のたいまつは、黒煙を吐きながらも、闇を押し返すには十分な光を放った。
二人はその光を頼りに進んだが、やがて通路は不意に途切れた。
建設途中で放棄されたらしく、壁は荒削りのまま、床には補助用の材木が無造作に積み残されている。
湿気を吸った木材は黒ずみ、ところどころに釘が錆びついて突き出していた。
肌を撫でる空気の流れに、ヴァルターがたいまつを掲げると、上方に伸びる鉄製の梯子と錆びついた鉄蓋がぼんやりと姿を現した。
足を止めたフリンツは、周囲を確かめながら、取り出した地図を広げる。
「ここは市街の南西端だ。穀物倉庫の地下通路…出口は廃墟の裏に繋がっている」
ヴァルターが眉をひそめる。「救援部隊と合流できるのか?」
フリンツは首を振った。
「無理だろうな。特に南西側は、突破作戦に備えて何重にも線を張っている。
俺たちにできるのは、どさくさに紛れて、何とか友軍線に近づくくらいさ」
彼は地図を折り返し、たいまつの光にかざした。
地形的に遮蔽物が多く、敵の巡回が通りにくい構造──
だが当然、待ち伏せの可能性も排除できない。
- フリンツに先に行かせる →P.54
-同時に出る →P.56
-ヴァルターが先に出る →P.58




