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二人は、噴き出す蒸気の霧に身を沈めた。
轟音が足音を覆い隠し、敵の耳を欺けると信じて。
ヴァルターは前を行くフリンツの背を追い、熱気にむせながら通路を駆け抜ける。
視界は白く霞み、方向感覚は曖昧になっていった。
蒸気の中で壁の輪郭すら掴めず、ただ音と振動だけが全身を包む。
やがて霧が薄れた瞬間、懐中電灯の光が正面から差し込んだ。
ソ連兵の巡回が、ちょうど通路を横切っていたのだ。
逃げ場はなかった。
銃口がこちらを向き、短い叫びとともに火花が散る。
蒸気の残響に混じって銃声が響き、二人の身体は床に崩れ落ちた。
END




