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とっさにヴァルターは、崩れ落ちた瓦礫を裂け目に押し込んだ。
だが、石材の隙間から蒸気は容赦なく噴き出し、熱気は弱まるどころか勢いを増すばかりだった。
フリンツは背嚢を外し、ヴァルターに押し付けた。
「これで裂け目を押さえてくれ!」
ヴァルターは頷き、噴き出す蒸気に背嚢を押し当てる。
熱気が腕を焼き、革の焦げる匂いが立ち込めた。
その間にフリンツは外套を脱ぎ、床に溜まった水で濡らす。
布地は重くなり、滴を垂らしながら彼の手に絡みついた。
彼はそれを裂け目に巻き付け、ヴァルターと力を合わせて締め上げる。
瞬く間に熱を帯びていく布地を、二人掛かりで必死に縛り上げると、蒸気の勢いはいくらか弱まった。
二人は胸を大きく上下させ、束の間の安堵を覚えた。
が、その静けさは長くは続かなかった。
背後に影が差し、鈍い衝撃が頭を打ち抜いた。
ヴァルターの視界が白く弾け、全身の力が抜けていく。
フリンツも短い呻きを漏らし、同じように崩れ落ちた。
最後に感じたのは、冷たい床の感触と、誰かの荒い息遣い。
その後、闇がすべてを呑み込んだ。
END




