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ヴァルターは視線を落とし、ただ沈黙を貫いた。
「……そうか。ならば、その『忠誠』の代償を払ってもらおう」
将校の合図とともに、背後から振り下ろされた銃床がヴァルターの視界を真っ白に弾けさせた。
椅子ごと床に転倒し、側頭部が冷たいコンクリートに叩きつけられる。
肺の奥まで凍てつくような震えと、脇腹を抉るブーツの衝撃。
爪の間に食い込む鉄の冷たさや、耳元で響く怒号を浴びるたび、彼の中で何かが「形」を成していく。
それは論理的な思考ではなく、もっと根源的な、どろりとした黒い塊だった。
自分を嬲る男の、歪んだ口元。その瞳に宿る、剥き出しの光。
それらに触れるたび、ヴァルターの魂の空白に、言葉にならない激しい渇きが
流れ込んでくる。
「どうした。まだ言えないか?」
髪を掴み上げられ、意識が遠のく境界線で、ヴァルターは自分の中に、巨大な
「何か」が根を下ろす音を聞いた。
情報を話す→P.33
沈黙を貫く→P.35




