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ヴァルターは短く息を吸い込み、フリンツに目で合図した。
「俺が囮になる。お前は隙を見て抜けろ」
その言葉に、フリンツの目が大きく揺れた。
「待て、無茶だ……!」
手を伸ばしかけたが、ヴァルターはすでに身を翻していた。
狭い通路に足音が響き渡る。
怒声が一斉に上がり、銃口がヴァルターに向けられた。
弾丸が壁を叩き、火花が散る。
ヴァルターは必死に走った。
だが、通路はすぐに行き止まりだった。
崩落した壁が立ちはだかり、逃げ場はない。
振り返った瞬間、複数の影が迫っていた。
銃声が重なり、衝撃が体を貫く。
瓦礫に叩きつけられ、視界が赤く染まった。
最後に思い浮かんだのは、伸ばされたままのフリンツの手だった。
彼が生き延びられることを祈りながら、意識は闇に沈んでいく。
END




