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凍てつく地下室の空気は、吐き出す息さえも白く染めないほどに冷え切っていた。
ヴァルターは、木製の椅子に縛り付けられていた。
耳を打つのは、コンクリートの壁に反響する赤軍将校の鋭い足音。
テーブルの上には、彼から没収された泥まみれの認識票と、半分凍った一切れの
パンが置かれている。
「グレーべ伍長、だったな」
訛りの強いドイツ語とともに、将校は使い古された地図を乱暴に広げた。
その指が指し示したのは、すでに瓦礫の山と化した市街地の一角。
「まずは、知っている無線局と補給集積所の位置を教えてもらおうか。どこだ?」
ヴァルターは答えず、ひび割れた唇を噛みしめた。
胃の腑を焼くような空腹と、一睡もしていない疲労が意識を混濁させる。
「包囲は完成している。パウルス将軍が降伏するのも時間の問題だ。ひとり頑張って何になる?」
将校は身を乗り出し、煙草の煙をヴァルターの顔に吹きかけた。
「場所を教えれば、このパンと、暖かい収容所への切符を約束しよう。
黙っていれば……この地下室が貴様の墓場になるだけだ」
外からは、絶え間ないカチューシャの咆哮が地響きとなって伝わってくる。
-情報を教える→P.29
-黙秘する→P.28




