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ヴァルターは銃を握り直し、瓦礫の影に身を沈めた。
足音が近づく。ロシア語の声が、はっきりと聞き取れる距離に迫る。
「今だ……」
彼は息を止め、引き金を絞った。
銃声が狭い通路に轟き、火花が闇を裂いた。
先頭の兵士が倒れる。だが、その叫びが仲間を呼んだ。
次の瞬間、通路の奥から怒号と銃声が返ってきた。
弾丸が壁を叩き、石片が飛び散る。
瓦礫の陰に身を伏せたヴァルターの耳に、四方から迫る足音が響いた。
「囲まれた……!」フリンツが呻く。
狭い通路に銃火が集中し、逃げ場はなかった。
瓦礫の影は遮蔽にならず、ただの墓標に変わる。
最後に見えたのは、火花に照らされた鉄骨の影だった。
END




