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ヴァルターは冷気の漂う方へ足を踏み入れた。
下り坂はすぐに急になり、足元の水が膝を越えていく。
電灯の光は濁った水面に吸い込まれ、周囲はますます暗くなった。
進むほどに空気は重く、息を吸うたびに肺が冷たく締め付けられる。
頭上の配管からは絶え間なく水滴が落ち、やがて細い流れとなって肩を打った。
数十歩進んだところで、通路は完全に水没していた。
濁流のような冷水が壁一面を覆い、先は見えない。
引き返そうとした瞬間、背後からも水が押し寄せてきた。
流れに巻き込まれた瓦礫が、退路を瞬く間に塞ぐ。
電灯が水に浸かり、光が一瞬で消えた。
凍えるような闇の中で、ヴァルターは胸を押さえる。
冷気が肺を締め付け、息は浅く、力は次第に抜け落ちていく。
最後に耳に残ったのは、水が壁を叩く轟音だけだった。
END




