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ヴァルターは梯子の縁に手をかけ、ゆっくりと足をかけた。
鉄の表面は冷たく、錆でざらついている。
一段ずつ降りるたびに、外の音が遠ざかっていく。
最後の段を踏むと、足元に水が跳ねた。
通路は低く、天井の配管が頭上すれすれに走っている。
蒸気の音が壁の奥で鳴り、時折、金属の軋みが響いた。
梯子の脇に点検用の金属棚があり、手回し式の電灯が吊るされている。
ヴァルターはそれを手に取り、ハンドルを数回回した。
軋む音とともに、ぼんやりとした光が灯る。
「まだ使えるか……」
彼は電灯を胸元に固定し、通路を照らしながら進む。
壁には番号も矢印もない。
方向感覚はすぐに曖昧になった。
左の分岐は水没していた。
右は崩れている。
中央の通路だけが、かろうじて通れる幅を残していた。
彼は足音を殺しながら進む。
水の匂い、油の匂い、そして焼けた金属のような匂いが混じっている。
空気は重く、息を吸うたびに喉が痛む。
数十メートル進んだところで、通路が二手に分かれていた。
片方は上り坂になっており、空気がわずかに乾いている。
もう片方は、さらに深く沈み、冷気が強くなっていた。
ヴァルターは立ち止まり、耳を澄ませた。
遠くで水音が響いている。
どちらにも、確かな出口の気配はない。
彼は一度、背後を振り返った。
光はすでに見えない。
- 上り坂の通路を進む →〔P.〕
- 深く沈む通路へ進む →〔P.18〕




