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ヴァルターは棚に残された缶詰を三つ、乾パンを数枚、慎重に選んで詰めた。
ポケットとコートの内側に押し込み、重さを確かめる。 これで、数日はもつかもしれない。
地下室の空気は湿っていた。
死体の匂いが、壁の隙間から染み出していた。
外ではまだ砲撃が続いている。
だが、音の間隔が広がってきた。 今なら動ける。
ヴァルターは崩れた階段の縁をよじ登り、再び街路へ出た。
雪は砲煙を吸い込み、灰色に濁っていた。
空気は冷たく、耳の奥で鼓膜が軋む。
どこかで叫び声が上がった。
砲撃は一時止んでいたが、遠くで銃声が断続的に響いている。
地下の湿った空気。
死体の匂いとともに、わずかに流れる風。
ある考えが、ヴァルターの頭を過った。
街路を進みながら、煙の流れと建物の並びに目を凝らす。
建物の密度が急に途切れている。
煙が低く流れ込んでいるのは、広い空間がある証拠だ。
操車場か、倉庫群か。
確信はなかった。
だが、戦場で何度も見てきた地形の兆候だった。
ヴァルターはその方向へ足を向ける。
倉庫の裏手に回ると、砲撃で崩れた壁の隙間に、鉄製の点検口が露出していた。
錆びた蓋を開けると、下には保守用の通路が続いている。
蒸気管、ケーブル、排水路。
通路は複雑に分岐していた。
一部は崩れ、一部は水没している。
ここなら、包囲線の下を抜けられるかもしれない。
ヴァルターは梯子を見つめた。
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