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ヴァルターは古びたシーツを裂いて帯状にした。
傷口に押し当て、圧迫する。
血はまだ滲むが、何もしないよりはましだった。
兵士が目を開けた。
濁った瞳が、こちらを見ている。
何かを言った。
声はかすれていて、言葉はわからない。
驚いているのか、怒っているのか、判別がつかない。
ヴァルターは処置を終えると、ゆっくりと手を離し、背負っていた鞄を開けた。
缶詰と水筒を取り出し、兵士の前に置く。
兵士は動かない。
視線だけが、じっとこちらを追っていた。
ヴァルターは缶詰を開け、自分で一口食べてみせてから、相手に差し出す。
兵士はしばらく動かなかったが、やがて、震える手で缶を持ち、ちびちびと口に運んだ。
最低限のやりとりは、身振り手振りで行った。
布を変えるとき、ヴァルターは手で「見せろ」と示す。
兵士は黙ってズボンをずらした。
傷はまだ深く、だが出血は収まりつつある。
翌日。早くも食料が底をつき始めた。
ヴァルターは周辺の建物を探してみたが、都合よく見つかるものはなかった。
仕方がない。
最初のあの地下室なら、運びきれなかった食料が、まだ残っているかもしれない。
幸い、ここから距離も遠くない。
荷物をまとめていると、兵士が身を起こした。
ヴァルターは空の缶詰を見せ、手で「すぐ戻る」「ここで寝ていろ」と示した。
兵士はじっと見ていた。
意図は伝わったように思えた。
だが、建物を出ると、やはり後からついて来ようとする。
当然、足元はまだおぼつかない。
ヴァルターはため息をつき、彼を背負った。
何とか地下室のある建物までたどり着いた。
瓦礫を踏まぬよう、慎重に足を運ぶ。
扉は半分崩れかけていたが、まだ開いた。
軋む音とともに扉を押し開ける。
その瞬間、室内にいた男が振り向いた。
ドイツ兵だった。
灰にまみれた軍服、肩にかけたカービン銃。
ヴァルターも動きを止めた。
兵士も、こちらを見たまま動かない。
-銃を抜いて撃つ →P.15
-話しかける →P.14




