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ヴァルターはトルクレンチを手に取り、油で濡れたナットにそっとかけた。
柄の重みが手首に伝わる。
ゆっくり力を加えると、金属がきしむような低い音を立て、錆びついたナットが
わずかに動いた。
(……いける)
さらに少し力をかけると、ナットは抵抗を失い、ゆっくりと回り始めた。
油と錆が混じった黒い筋が、金具の下へと垂れていく。
一つ目が外れ、続いて二つ目も同じように緩めていくと、やがて台座は支えを
失い、金具ごとわずかに傾いた。
ヴァルターは金具をそっと引き抜き、床に置く。
(……取り替えろ、か)
だが、工具包の中を探しても、代わりになりそうな金具はない。
あるのは、細いワイヤーの束だけ。
(……これしかないよな)
ヴァルターはワイヤーを取り出し、配管に当てがった。
あとは、どれだけ締めるかを決めるだけだ。
-しっかりピンと張って固定する→P.109
-やや緩めにたわみを持たせた状態にする→P.108




