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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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105/131

p94

ヴァルターは、海図の上に手を置きながら説明を続けた。

「……クレタ島には、ギリシャから逃れた英軍がいるはずです。降伏の意思を

示せば、交渉の余地が――」


艦長はゆっくりと顔を上げた。

その灰色の瞳には、怒りではなく、もっと冷たいものが宿っていた。


「……ヴァルター」

声は低く、乾いていた。


「クレタの守備隊は、一年前に降伏している。今はドイツの占領下だ。

そんなことも知らずに、そこへ向かえと言うのか」


ヴァルターは息を呑んだ。

言葉が出ない。


艦長は海図から手を離し、机の端を一度だけ指で叩いた。

その音は、狭い艦長室に不自然なほど大きく響いた。


「…お前は状況を理解していない。いや、理解しようとしていないのかもしれん」


艦長は立ち上がり、机の脇の伝声管の蓋を開けた。

「当直、艦長室へ」


ヴァルターは椅子の縁を握りしめた。


「艦長、私は――」

「黙れ」

艦長の目に、もう“同胞を見る視線”はなかった。


「戦況も知らず、占領地へ降伏しに行くなどと口にする者を、自由にしておくわけにはいかん」


扉が開き、当直の下士官が二人入ってくる。

彼らは状況を一目で察し、無言でヴァルターの両側へ立った。


艦長は短く命じた。

「医務室後部の隔離区画へ。監視もつけろ」


兵士たちがヴァルターの腕を取る。


「艦長……私は、ただ――」


「もういい。お前は、艦を沈める」

艦長は視線を逸らさずに告げた。


扉が閉まり、金属音が潜水艦の腹に沈んでいく。


ヴァルターの提案は、無知と誤算のまま終わった。


END

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