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灰の街を越えて *AI執筆  作者: gramgram


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103/131

p92


ヴァルターは海図の東側を指し示した。

「キプロスにはまだいくらかイギリス軍が残っているはずです。

そこへ向かえば……」


「ヴァルター。ひとつ聞く」


灰色の瞳が、まっすぐにヴァルターを射抜く。

「どうやって海峡を抜けるつもりだ?」


艦長は指先で、ダーダネルス海峡とボスポラス海峡を叩いた。


ヴァルターは一瞬だけ言葉に詰まり、それから無理に声を整えた。

「……夜間に潜航し、沿岸の監視を避ければ…あるいは、トルコは中立国ですから交渉次第で通行を黙認してくれる可能性も――」


艦長は海図から手を離し、ゆっくりと椅子の背にもたれる。

革張りが軋む音が、狭い艦長室に場違いに響く。


「……ヴァルター」


名を呼ぶ声は、先ほどよりも低かった。

「トルコは中立国だ。だからこそ、海峡は“厳重警戒”されている。軍艦の通行は、どちら側であれ許されん。潜航して突破など、外交問題どころか戦争行為だ」


ヴァルターは息を呑んだ。


「そんなことも知らずに、キプロスへ向かえと言うのか」


艦長はゆっくりと立ち上がり、机の脇の伝声管の蓋を開けた。


「当直、艦長室へ」

短い呼びかけが伝声管に吸い込まれていく。


「艦長、私は――」

「黙れ」


艦長の目にもはや何の感情も見えなかった。


「状況も地理も理解せず、中立国の海峡を抜けようなどと口にする者を、艦内で

自由にしておくわけにはいかん」


扉が開き、当直の下士官が二人入ってくる。

彼らは状況を一目で察し、無言でヴァルターの両側へ立った。


「医務室後部の隔離区画へ。監視を怠るな」


下士官たちがヴァルターの腕を取る。


扉が閉まり、金属の音が潜水艦の腹に沈んでいく。

ヴァルターの提案は、知識不足と致命的な誤算のまま終わった。


END


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