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店舗在庫が『残りわずか』なので急ぐことにした

作者: 阿吽トム

初めまして、阿吽あうんと申します。

どうぞごゆっくりお読みください。


実体験をもとに感じた思いを残したくなり筆を執りました。

こんな体験、したことありませんか?

 久しぶりに定時で会社を後にして、軽い足取りで駐車場に向かう途中でSNSを見ていた。

 さらさらと指でスクロールしながら、別に見なくてもいい情報であろうことを吟味することなく、上へ上へおくる。その途中でぱっと目に留まったのが前に気になっていた洋服のセール情報だった。


(これ‥‥前にお店で良いなと思っていたけど、四千円ぐらいして一旦断念していたやつだ。今回のセールで半額以上、いや、七割引きぐらいになっている。


 これは‥‥‥買いだな‥‥!!)


 私はすぐさま、近くの店舗に足を運んだ。幸いなことに職場からは車で十分ほどでつく場所にお店はある。家からも遠くない。


(定時であがれたし、セール情報もたまたまチェックできてラッキーだぞ‥‥!)


 特に慌てることもなく目的地へむかった。



 お店について、さっそく店内をうろうろ。目的の物を探す。

 平日の夕方だからか、閑散としていて店内は見やすかった。せっかく来たからゆっくり見てみようと店内を物色。


(あ、そういえば靴下ほしいんだった。白とか黒じゃなくて、明るい色のやつ。四足買えば割安だから、赤と青、緑と黄で買っちゃおうかな)


(あ、このTシャツもかわいい。え、しかもセールで安くなってる!どうしよ、買おうかな。でも最近お金使いすぎかな‥‥。うん、一旦考えよう‥‥)


 そうやってしばらくうろうろとしていると、目的の商品のところまできていた。

 

(そうそうこれこれ、さっきスマホでみてたやつね。おお、肌触りの良い感じだ。しゃかしゃかしてる素材で、伸縮性のある生地。真冬以外は年中いけそうだ。合わせ方次第で休みの日におしゃれに着こなしたり、夜にふらっとスーパーに行くなんかもいいじゃん。このポテンシャルで、このクオリティでこの値段‥‥買うにきまってるじゃんこんなの!!)


 にやにやしながら、いろんな妄想をした。腰に(あて)がったりして、一度試着でもしようかと思ったその時。


(‥‥‥‥!!!)

「エックス‥‥エル‥‥‥だと‥‥‥」


 棚にある在庫のどれを見ても同じ――『XL』

 どの色の種類を確認しても――『XL』

 奥の方を探しても全部――『XL』


 ほしい気持ちが先行しすぎて、考えもしなかった。ほしいサイズがない。ほしいサイズのひとつ違いぐらいなら、まだ検討の余地はあるけど、さすがこれは大きすぎて無理がある。

 微かな望みに懸けて、ダメもとで店員さんに出ていない分の在庫がまだあるのか尋ねてみたが、その質問も恐らく私が初めてではないのだろう。答え慣れている様子だった。

  考えることは皆同じだった。私は一歩出遅れたのだ。


(ぐぬぬ‥‥悔しすぎる‥‥)


 とりあえず、手に持っている四色の靴下だけ会計を済ませて店をでた。

 車に戻っても半ばあきらめきれない私は、近隣の店舗に在庫がないかをスマホで調べて探した。今時はネットで近隣店舗の在庫を調べれるらしい。活用したことはなかったが、なんとなくそのことは知っていた。

 すると、このお店からは車で三十分ほど離れているが、それでも今の場所からすれば一番近い場所にほしいサイズがあることがわかった。


(あれ?見間違いじゃないよな‥‥え、あるじゃん‥‥!!)


 見たところ、大き目のサイズと私のほしいサイズ以外は売り切れの表示だったが、ちょうど私のほしいサイズだけがある。またとないチャンス。これを逃せばもう手に入らない気さえする。

 善は急げだ。すぐさま駐車場を出て車を走らせる。


 赤信号で停止中にさきほどのサイトを見ていると、やはり見間違いなんかじゃない。ちゃんと『在庫ありの店舗』として、いまから向かうお店が表示されている。

 でもよく見ると次の画面――


『△残りわずか』と表示されている。


(残りわずかって‥‥どれだけなんだ。なんかキープできるみたいなことが書かれているが、アカウントを作って色々しないとできないらしい。運転中にこんなことできない。そうこうしている間にたぶんつくから、そっちの方が早そうだ‥‥とにかく急ごう‥‥!!)


 向かう道中、先の店でのんびり靴下を見たり、一枚のTシャツを買うのに迷いに迷ったりした時間を恨んだ。最初から在庫を確保したり、近隣店舗の在庫状況を把握していればこんなに急ぐことも、ヤキモキすることもなかっただろうに。

 仕事終わりの帰宅ラッシュのせいか、思ったより道路も混雑している。気ばかり焦るが、車は進まない。『残りわずか』という曖昧な表現で不安が募る。


(残り一着だったらもうないかもしれない‥‥)

(私より前の車が同じ目的地に向かう場合、この人に先を越されて購入されてしまう‥‥)

(それどころか、今お店に来店している人だけでもう完売しているかも‥‥)

(なんだったら、情報が反映していないだけでもう完売しているかも‥‥)


 考えても仕方ないし、スマホをどれだけ見ようと車が目的地に着かない限り意味がない。何より事故など起こしては元も子もない。とにかくは最後に確認した『残りわずか』の表記を信じていまは進むしかない



 駐車場についた。

 まず驚いたのはもう十八時を過ぎているのに、ガードマンが駐車場に立って車を誘導している。こんな時間なのによく見ると、車も多い。すし詰め状態の車を目にし、ますます不安になる。


 待ち合わせギリギリに目的地に向かうように、駆け足で自動ドアを通過する。あまり来ない店舗だったので、見慣れない店内のレイアウトにきょろきょろして、目的の物を探す。駐車場の車の多さから想像通り、人が多い。さっきの店とは賑わい方が違って、休日のショッピングモールぐらい人がいる気がした。

 

(どこだ‥‥どこだ‥‥どこにあるんだ‥‥)


 機敏な動きで店内を物色。

 そしてついに見つけた――。


(あった!!!見た感じラスト三着!!!!)


 とりあえず、手に取ってその場離れた。そして、少し離れた場所でほしかったサイズのそれを鏡で腰に宛がう。見事にぴったり。不安は一気にふっとんだ。

 遠目から、商品があったカートの付近に目をやると、六十代ぐらいご夫婦と、チラシを持った主婦の方が例の商品を手に持ち安堵の表情を浮かべている。主婦の方は店員さんに場所を聞いて案内されてきたのか、チラシを見ながら『もうこれだけしかないの?』と聞こえてきて、驚いた表情をしている。


 しばらくその光景を見てその場を離れた。店内をぐるっと一周して、気持ちを落ち着かせて、また例の商品の場所に戻り、売れてしまったかどうか確認しにいくともう商品はなく、店内には私の持っている一着、ご夫婦の一着、主婦の方の一着で売り切れ状態になっている様子だった。

 実際に戻って確認しにいくと、ちょうどその場にさきほどのようなシチュエーションをまた目撃した。今度は七十代ぐらいの女性二人で例の商品を探しているようで、店員さんにその場で確認をしてもらっており、『もうなくなってしまって、裏に在庫も‥‥』と案内されていた。


 少し悪い気もしながら、でも私だって急いでここにきて、ちゃんと調べて自分の足で買いに来た。何も後ろめたい気持ちもないし、お金だってもちろん払う。複数買い占めるわけでもない。

 そんなことを考えながら会計を済ませて、お店を後にした。


 帰りの運転中、車の中で考えていた。私は運がよかった。日頃の行いの成果か。定時に仕事を終えて、一旦は別の店舗に足を運んで四苦八苦しながらもこうやって手に入れた。時間にして、たとえ三分の遅れがあっても、恐らくは商品はなかっただろう。それほどまでに一分一秒を争う戦いだった。

 たった千円ほどのものを購入するのにこんな苦労をする必要があるのかないのか。ことはもはや金額の問題ではない。あきらめずやり遂げ、見事に手にしたことが重要である。私は達成できたのだ。

 

 でもこれは私ひとりの力ではない。

 セールをしてくれているブランドのパワー。安くなった商品、それらをちゃんと規則正しいマナーで購入していったお客さん。もちろん買い占めた人も中にはいるだろう。または、在庫を把握してしっかり発注を行って管理してくれた店舗。ひいてはこの商品をつくり上げてくれた商品の開発をした方。他にも言い出すときりがないがいろんな人のおかげで今日はこの商品を手にすることができた。




 今日もすべてに感謝をして生きよう。


 ありとあらゆる、すべての人へありがとう――。











最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

もし宜しければ、☆印で評価をつけて頂けると参考に思います。

コメントも大歓迎です。


何卒宜しくお願い致します。

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