第7話 私と世界と
今回はちょっと長いし説明過多です。流し読みでも良いかもしれません
これでもけっこう削ったんでよすよ?
悪いニュースは何か嫌な予感がする・・・まずは良いニュースから聞くか?
「え~っと、良いニュースからで」
「はい!良いニュースからですね!流石です! パンパカパーン!あなたは一生涯この世界を無料で無制限にプレーする権利が与えられました!
おめでとーございます!パチパチパチパチ!しかもデータは以前あなたがプレイしたデータそのまま引き継ぎ、今持っている装備も使い放題!
さらにさらに!?。GMサポートも使い放題で~~~っす! わ~い!」
お~すごい一生涯無料とかか。しかも強くてニュープレイか。まだサービス前だろうからかなり俺TUeeeeeeできるな。ま~しないけど
私はゆっくりプレイしたいからどっちでもいい。
「うん。確かに良いニュースだけど。今回の不手際の金銭的な賠償とかも忘れないでね。あと、現実世界がどうなってるのかとか、会社には連絡できてるのとか
そもそも私の体はどんな状態なのかとか説明もしてほしい」
「あ~、あははははは・・・そうですよね。気になりますよね当然。・・・・え~その辺は悪いニュースにつながるのですが。心の準備は良いですか?」
なんだ?ずいぶんもったいぶるじゃないか。まさか体が病院で会社は無断欠勤だったとかじゃないだろうな?
「心の準備も何も、皆目見当がつかないので、もう1から全部説明してください」
「あっはい、え~っと。大変言いにくいのですか、って言うか、これから言うのは極論私どもの責任ではないので、そこら辺はご了承ください」
・・・・・なんだかやな予感がする。もしかして誰か他のだれかが関与してゲーム世界に入れられたとかか?
「えっとですね。あ~言いにくいな。とりあえず会社の方は大丈夫です。無断欠勤とかじゃないです」あ~そっちはなんとか話がついたのね。
「会社に入っている保険が適応されまして、保険金があなたの兄に支払われる事になりました。
あなた自身で入っている任意保険も多数は満額支払われます。」うん?保険料?
「でですね。その保険料でたいそう立派な葬儀が執り行われるそうです」ん?葬儀?誰の?
「で!悪いニュースの本題なのですが・・・・・リアル世界のあなたは、死んでました!脳梗塞でベッドの中で、ぽっくりと!」
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その言葉が耳に届いた瞬間、頭が真っ白になった。心臓が一気に凍りついたような感覚に襲われ、言葉を発することすらできない。
ただ、音が消えた世界で、視界がぐらぐらと揺れる。目の前の幼児の無邪気な姿が、かえって現実感を奪い去っていく。
「え……なんだって?死んでる……?いや、どういうことだ?」と喉の奥で絞り出すように声を出したが、自分自身でその言葉が信じられない。
「私はここにいるじゃないか……手だって動くし、鼓動も感じる。でも死んでるって……冗談だよな、そうだろ?」と震える声で問いかける。
膝が力を失い、その場に崩れ落ちた。全身に広がる冷たい感覚が、自分の存在を否定するかのようだ。
幼児は手をバタバタさせながら、「ヒデ!ヒデ、だいじょぶ!いきてる!」と拙い言葉で励ましてきた。
しかし、その言葉もどこか遠くに聞こえて、胸の奥の空白を埋めるには至らない。
「……これは何かの比喩か?死んでるってどういうことだ?私はこうして生きているだろう!」と叫ぶように問い詰めたが、GMセックの冷静な声が響いた。
「確かに、今あなたは生きています。この世界では。しかし、現実世界では、あなたの肉体は既に停止しています。」
「そんなことがあり得るのか?いや、あり得ない……」
何度も頭を振るが、事実を否定することができない。足元が崩れていくような感覚に襲われ、膝を抱え込んだ。
「どうして私なんだよ……なんでこんなことに……」と呟く。目の前の幼児は、涙目になりながらぐっと服を握りしめている。
「ヒデ!ヒデ、いきてる!だいじ!」
その小さな手が、私の袖をぎゅっと握る。拙い言葉がまるで命綱のように感じられた。
「生きてるって……それだけで大事なことなんだよな、きっと。」と少しずつ自分に言い聞かせるように、深い息を吐いた。
体が震える中、幼児がその小さな手で、精一杯励まそうとしている姿が目に焼き付いた。
「でもなんで死んだのにここにいるんだよ。意味がわからない。」
セックは落ち着いた声で答えた。「そうですね。すぐに理解しづらいのも無理はありません。一つずつ説明しましょう。少し長くなりますが、覚悟してください。」
「まず、あなたがいた現実世界ですが……それは多数の意思を持ったエネルギー体によって想像された世界です。
人間は、そのエネルギー体の一部の意識を投影した存在なんですよ。」
「……どういうことだ?」
「簡単に言えば、人間が生きる世界は、エネルギー体が作り出したもの。そして、人間はその意識の一部として生まれています。
死ぬと、その意識は本来のエネルギー体に戻る。生きていた頃の記憶や経験を持ってね。」
「じゃあ……死んだらどうなる?」
「ええ、もちろん本体に戻るのですが、強い未練があると、その一部が現世に残ります。つまり、幽霊として。」
幽霊が単なる迷信ではなく、エネルギーの残留現象だったという事実に、思わず息を飲んだ。しかし、話がずいぶんと遠回りしているように感じる。
「なるほど。でも、話が遠回りしているような気がするが、本題に戻るんだろうな?」
「人間の想像には力があります。長く信じられてきたものは具現化する。例えば、各地にいる神々もそうです。
人間の想像によって形成され、信仰を受け続けることで存在し続けています。」
「そして、多数の人間が愛し、存在を熱望し、未練を残した。このゲームの世界も多くの人のエネルギーで具現化しています」
「それが……私と何の関係がある?」
GMセックは少し声のトーンを落とした。「あなたは……突然死んでしまいました。特に現世には未練は無かったようですね。
普通なら元のエネルギー体に戻り、同化されて消えるのですが、あなたはゲームの世界に強い思いを持っていたんですよね。それが、あなたが異世界に召喚された理由の一つです。」
私は言葉を失った。
「……どうして、私なんだ。」
セックの声が少し優しくなる。「それについて、きちんと説明しますよ。」
「死んだのになんでここにいるんだよ。天国とかじゃないのか?」
「説明が難しいですが、まず、天国や地獄といった概念は宇宙規模では存在しません。善悪そのものの概念が、そもそも固定されたものではないのです。」
「そんなことはないだろ?人を殺したりしたら、どう考えても悪だろ?」
「それは人類の価値観です。例えば、別の銀河では、知的生命体が他者を取り込んで成長することがあります。それは彼らにとって善なのです。
また、親を取り込むことで生命を強く維持する文化もあります。他の世界では、これが繁栄の象徴とされるのです。」
「つまり……宇宙規模で見ると、善悪の概念は単純ではない、ということか?」
「そうですね。宇宙は広すぎて、一つの価値観に縛られることはありません。そして、人間のように魂の概念は存在せず、すべては多次元意識体のエネルギーです。」
「じゃあ……死んだら、そのエネルギー体とやらに戻って終わるのか?」
「いえ、一度は溶け込むものの、どこか別の世界に行き、再び生まれ変わることもあります。」
「……輪廻転生ってことか?」
「ええ、近い概念ですね。本体のエネルギー体は多次元に存在し、時間を超越している。
つまり、異なる時代に複数の分身を送り込むことも可能です。しかし、あなたの場合は違いました。」
「どう……いうことだ?」
「この世界の存在が不安定になり、維持するためのエネルギーが不足していました。そのため、この異世界に強い思いを持っていたあなたの意識体を、
エネルギーの源として召喚したのです。ただの未練や幽霊とは異なり、本体との繋がりを持つ意識体は価値がありましたから。」
「私は……ただの燃料ってことか……」
私は苦笑しながら呟いた。すると、幼児がぐっと服を握りしめる。
「ヒデ!ヒデ、だいじ!だいじ!」
その小さな手が震えている。泣きそうな顔をしている幼児を見て、ふと息を深く吸い込んだ。
「……わかった。もうちょっと、詳しく聞かせてくれ。」
### **異世界の安定化**
セックの声は落ち着いていた。私は覚悟を決めて聞く。幼児は私の袖をぎゅっと握りながら、不安そうな目で見上げている。
「まず、この異世界は、もともとゲーム仕様のまま形成されていました。ゲームのシステムが基盤となったため、
プレイヤーがいないと維持できず、崩壊する運命にあったのです。」
「……ゲームシステムのままだった?」
「ええ。例えば、魔物の存在理由が曖昧でした。ゲームでは"敵キャラクター"として配置されていたものの、
この異世界において彼らが何の目的で存在するのかが決まっていなかった。
魔物は無目的に発生するだけで、捕食関係や繁殖行動が存在せず、生物的な循環が成り立たなかったのです。」
私は眉をひそめた。「それって、つまり……この世界に生態系がなかったってことか?」
「その通りです。生物のバランスが欠如していたため、GMたちは魔物の進化や繁殖の仕組みを作ることから始めました。
魔物に特性を与え、狩られた場合に再生されるメカニズムを調整し、狩猟や危険区域の概念を導入しました。」
「……それってすごいことじゃないか?」
「ええ。ただ、それに力を注ぎ込んだ結果、20人のGMのうち10人がエネルギーを使い果たし、静かに姿を消しました。」
私は息を詰まらせた。「彼らは……消えたのか?」
「本体のエネルギー体へ戻ったという方が正しいでしょう。彼らは未練が弱かったため、異世界を修正するために自らのエネルギーを捧げたのです。」
その重みを感じながら、セックの言葉を待った。
### **人間社会の安定化**
「魔物の修正が終わった後、次に人間社会の問題に直面しました。」
「……問題?」
「はい。そもそも、この世界の人間には、家族や子供を持つという仕組みが存在していなかったのです。」
「な、なんだって……?」
「ゲームのキャラクターには性欲がなく、子供を生むというシステムも組み込まれていませんでした。その結果、
プレイヤーがいなくなったこの世界では、人間が時間とともに減少し、絶滅の危機に瀕していました。」
私は言葉を失った。「だから……それを修正したのか?」
「ええ。GMたちは人間に繁殖本能を植え付け、夫婦や家族の概念を導入しました。こうして子供が生まれる仕組みが確立されたのです。」
人間らしい社会が、まるで「プログラムの修正」のように施されたという事実が、私の胸を打った。
「他にも問題はありました。この世界には"農業"の概念がなく、食料が確保できなかったのです。」
「……食料?」
「はい。そもそも農民という職業が存在していませんでした。ゲームでは食料はアイテムとして購入する仕組みだったため、生産活動が存在していなかったのです。」
「それで……GMたちは?」
「広大な農地を創造し、人間たちに農業の知識を植え付け、食糧生産の循環を作りました。
それと同時に、経済の仕組みも必要になり、通貨制度を再構築することになりました。」
私はこの世界がゼロから作り直されたことに、あまりにも大きな衝撃を受ける。
「……まるで、人間を新しく創造したみたいだな。」
「その通りです。ゲームの枠を超え、現実的な社会を構築するため、GMたちは自らの力を捧げました。」
口を開きかけたが、言葉が出なかった。
### **街の改造と奴隷制度の導入**
この世界の街は、もともとゲームの仕様に基づいて作られていました。しかし、ゲームの街は見た目だけが整っていて、実際に人々が生活するには不十分でした。
「……不十分って、具体的には?」
「例えば、下水道やゴミ処理場が存在しなかったんです。ゲームではそんなものは必要ありませんからね。しかし、現実的な社会を維持するには、衛生環境が不可欠です。」
確かに、現実世界では当たり前のインフラがなければ、人々の生活は成り立たない。
「そこで、GMたちはまず地下水を創造し、井戸を設置しました。そして、下水道システムを構築し、ゴミ処理場を作りました。さらに、生活を快適にするための魔法――例えば、服や体を清潔に保つ生活魔法を開発しました。」
「……それって、かなり大変だったんじゃないか?」
「ええ。これらの改造には膨大なエネルギーが必要でした。そのため、GMたちは次々と力を使い果たし、静かに姿を消していったのです。」
その犠牲の大きさに言葉を失った。
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セックはさらに詳しく説明を続けた。
「この世界では、刑務所という概念が存在しませんでした。そのため、犯罪者を管理し、
社会に貢献させるための仕組みとして『犯罪奴隷』という制度が導入されました。」
私は眉をひそめた。なんかエグい話になってきたな。しかもだんだん難しくなってきてるぞ。そして説明が長い。
「犯罪奴隷……?そんな仕組みがあるのか?それって一体どういうことなんだ?」
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### **犯罪奴隷の仕組み**
セックは慎重に言葉を選びながら説明を続けた。
「犯罪奴隷は、罪の重さに応じて異なる労働を課される仕組みです。
軽犯罪者は比較的軽い労働に従事しますが、重犯罪者は過酷な環境での労働を課されることが多いです。
例えば、炭鉱での採掘作業や危険な建設現場での労働などですね。」
少し顔をしかめた。
「……それって、かなり厳しいんじゃないか?」
「ええ、確かに過酷な労働を強いられる場合もあります。しかし、これは罪を償うための制度であり、刑期を終えれば必ず自由の身となることが保証されています。」
「……刑務所の代わり、ってことか。」
「その通りです。この世界には刑務所という施設が存在しなかったため、犯罪者を社会に貢献させる形で管理する必要がありました。
犯罪奴隷制度は、そのために作られた仕組みです。」
「……でも、それって犯罪者にとっては厳しいけど、社会全体には役立つ仕組みなんだな。」
「ええ。犯罪奴隷は、街のインフラ整備や資源採掘など、社会の基盤を支える重要な役割を果たしています。」
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セックは話を続けた。
「この世界には、犯罪奴隷と経済奴隷という二つの制度があります。
経済奴隷は、借金を返済するために労働を行い、返済が完了すれば自由の身となります。
また、魔法契約によって安全が確保されており、奴隷としての労働条件は自由人と同じ水準が保証されています。」
少し驚いた。
「……それって、現実世界の奴隷制度とは全然違うな。」
「そうですね。この制度は、ローマ時代や日本の経済奴隷の仕組みを参考にしつつ、より人道的な形で構築されています。
例えば、ローマでは奴隷が一定の条件を満たせば解放される仕組みがありましたが、アメリカの奴隷制度ではそのような自由はほとんどありませんでした。」
「……確かに、アメリカの奴隷制度は聞いたことがある。って言うより、奴隷ってそういうもんだと思ってた。」
「ええ。一方で、日本では経済的困窮による『経済奴隷』が存在しましたが、彼らは人間としての扱いを受け、条件を満たせば解放されることが一般的でした。
この異世界の奴隷制度も、そうした柔軟性を取り入れています。」
深く息を吐いた。
「……つまり、この世界の奴隷制度は、社会を維持するために必要な仕組みってことか。」
「その通りです。そして、犯罪奴隷や経済奴隷の労働によって、街のインフラが整備され、人々の生活環境が大幅に向上しました。」
ここまでの修正作業で、10人のGMのうち5人が力を使い果たし、静かに姿を消しました。
私は幼児を見つめた。その小さな手が、自分の袖をぎゅっと握りしめている。
「……分かったよ。お前たちがどれだけ頑張ったのか、少しだけ分かった気がする。」
セックの声が少し柔らかくなった。
### **異世界の統治機構の構築**
セックは少し息をついて話を続けた。「さて、街の改造や奴隷制度の導入によって、この異世界の基盤はある程度整いました。
しかし、それでもまだ足りない要素がありました。」
私は考え込む。「足りない要素……?」
セックは頷いた。「はい。この世界は未完成のまま発展し続けてきたため、根本的な統治体制を確立する必要がありました。」
「例えば?」
「街を維持するためには、インフラを管理し、点検し、整備する官僚機構が必要です。そして、犯罪者を取り締まり、管理する警察機構も。
その上には政治機構が存在しなければなりません。」
私は眉をひそめた。「そんな組織、この世界には元々なかったのか?」
「ええ。もともとこの世界はゲームの仕様を基盤にしていたため、長期的な政治体制や社会維持の仕組みが存在していませんでした。
しかし、それを現実世界のように完全に構築するには、この世界の土台がまだ未熟だったんです。」
「だから……中世の貴族制度を導入したのか?」
「その通りです。この世界では王を中心とした統治制度を確立し、その下に各地を治める貴族を配置しました。
貴族たちは領土を管理し、統率を取る役割を担うことになりました。」
「……街の治安はどうしたんだ?混乱が起きなかったのか?」
「街の治安は最も急務だったため、各街で独立した保安機構を選挙によって作りました。」セックは少し誇らしげに言葉を続けた。
「この保安機構は街ごとに独立して機能し、街の秩序維持を担いました。」
「それは……民主的な仕組みなのか?」私は少し驚く。
「ええ。街の住民が選挙で保安官を選び、その保安官が治安維持を担当します。
ただ、完全な独立とはいえ、形式上はその街を統治する貴族に任命権が与えられています。」
「つまり……貴族が保安官の選出に口を出せるってことか?」
「理論上はそうですが、実際にはほとんど拒否されることはありません。
領主は保安官を形式的に任命するだけで、基本的に保安機構は独立した組織として機能しています。」
私は腕を組んで少し考え込んだ。「……なんか、現実の政治システムに近づけようとしている感じがするな。」
「ええ。元々この世界には長期的な政治体制がなかったため、完全な現代社会を再現するには無理がありました。
しかし、最低限の秩序を維持し、街の統治が可能になるように、貴族制度と選挙による保安機構を組み合わせる形にしたのです。」
私はゆっくり息を吐いた。「……確かに、社会の土台を作るにはそれしか方法がなかったのかもしれないな。」
幼児が私の袖をぎゅっと握る。「ヒデ、ヒデ、むずかしい……」
私は苦笑しながら幼児の頭を軽く撫でた。「そうだな。これはかなりややこしい話だ。」
### **最後の問題**
「で、色々手を尽くしたのですが、最後にどうしても解決できない問題が残りました」
「まだあるのか、もうそろそろ終わりだろうな」
「はい。これが最後の問題で解決が困難な問題です。そして根本的な問題。
残ったGM全員の力を使えばなんとかなるかもしれませんが、それだと管理者がいなくなります」
「例えば?」
「経済制度の安定化、長期的な都市計画、文化の発展、そして……異世界の寿命の問題です。」
「寿命……?」
セックは慎重に答えた。「ええ。この世界はゲームの設定を基盤にしているため、世界そのものの寿命が存在するのです。」
「この世界は、元々ゲームの設定に基づいて作られたため、本来ならば"エネルギー枯渇による崩壊"が起こるはずでした。
しかし、GMたちが世界を修正していくことで、ある程度の安定化は実現されました。」
「それでも寿命がある……ってことか?」
「ええ。この世界が成立するための基盤となるエネルギーが不足している以上、いずれ崩壊する運命にあります。」
私は考え込んだ。「……それを防ぐには?」
「この世界に新しいエネルギーを供給し、進化させることが必要です。そして、それを可能にする存在が――」
幼児を見てからセックに聞いた。「……私か。」
「その通りです!あなたの魂は本体のエネルギー体と強く繋がっているため、それとさらに上の高次元の意思が関心を示してくれるかもしれません。
それがこの世界に新たな力をもたらす可能性があります。」
「……ただの可能性ってことか?」
「ええ。しかし、あなたはこの世界にとって特別な存在であることは間違いありません。」
セックは言葉を続けた。「そして、残った5人のGMのうち、一番力の強いGMが、本体との繋がりの強い、
亡くなった瞬間の魂と言える意識体を召喚して力の大半を使いました。そのGMは非常に力が強く、それゆえにこの世界への未練も強かった。
結果としてわずかな意識体が残り、力に見合った個体へと変化しました。」
何故か幼児が力強くしがみついてきた。
「その個体。その幼児が、GMルミナス。この世界で最も力が強く、我々のリーダーだった人です。」
「おまえか!」
幼児はプルプルと震えながら、「ちがう!ちがう!うー!やだ!」と涙目になりながら必死に否定する。
いやいや、何もしないから!でもこの子が元凶なのか?複雑な感情に襲われた。
セックは慌てて言葉を続けた。
「たしかにこの子が召喚しましたが、あなたが亡くなったのは私たちの現実の世界とは関係ありません。その子が召喚したのは、あなたが亡くなった後のことです。」
ああ、そういえばそう言っていたな。なんだか釈然としないが、本体に溶けて消えると思えば、こうして意識が保たれているのは悪いことではないのか?
幼児は震えながら私の袖にしがみつき、上目遣いで涙目で見上げてくる……くそ、卑怯だな。
「ああ、まだ実感はわかないし、訳も解らないけれど、一旦受け入れるよ。だからそんなにしがみつかなくてもいいよな。な?」
幼児――ルミナスは透明な涙を流しながら、まだ目に涙を貯めた状態で満面の笑顔になった。
やばいな。何でも許せそうな感じだ。さすが元GMの存在感だ。
「で、私は一体ここに呼ばれて何をすればいいんだ?何かできる気は全くしないのだが……」
セックは穏やかに答えた。
「特に意識的に何かする必要はありません。ただ、楽しんでください。私たちが守り抜いてきたこの世界――ルネージェを。」