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宰相の娘  作者: 衣々里まや
17歳
35/50

父の過去

先生は、先ぶれもなく突然訪れた私に嫌な顔ひとつせず、屋敷内へと招いてくれた。


その場所は知の館と呼ぶにふさわしい、一冊の上等な辞書のような家だった。漂うのは、紙とインクのにおいに似た深みのある香のかおり。小さくごてごてとした装飾は見えず、すべてが大きくどっしりと構えた家具ばかりで、蒸留酒を思わせる落ち着いた色の内装で統一されている。


どの部屋にも本の詰まった書棚が必ずあって、その周りにはたいてい座り心地のよさそうな椅子が据えてあり、いつでもすぐに知識が吸収できるようになっているのもラパント卿らしい。


先生はゆったりとした椅子に案内し、私が腰かけるのを待って口を開いた。


「宰相閣下の過去をお知りになりたいと?」


「はい。先生はかつて評議院にいらっしゃいました。宰相になりたての父のこともご存じであったはず。何でも構いません。父の過去をなにか覚えていませんか? もしくは、父について詳しい方をご紹介いただきたいのです」


「なぜ、そのようなことを?」


尋ね返す先生の声音も表情にも変化はなく、ラパント卿にとって父がどういう存在であったのかは想像がつかない。


「……父の考え方、心の中を知りたいのだと思います」


「――ならば、姫様の目の前にいる人間に訊くのがよろしいでしょう」


「えっ?」


ラパント卿は椅子に座り直し、テーブルの上で鷹揚に手を組み替えた。猫のように低く喉を鳴らして、驚いている私を愉快そうに笑う。


「なんと、ご存じなかったか。てっきり、親子で儂を“先生”とけしかけておるのだとばかり……これでも昔は私塾サロンをひらいておりましてな、宰相閣下は生徒として通っておられた」


「父が、先生の……?」


ラパント卿は昔を懐かしむように宙に目をやり、そっと呟いた。


「姫様を見ていると、ジュードを思いだす」


ジュード――父の名だ。




「ジュードに初めて会ったのは、彼がまだ12か13のころだったと記憶しております。私が出した方程式を解いたと言って、計算式だらけのくしゃくしゃの紙をにぎりしめ、息を切らしながら駆けこんできました。目を輝かせ、未来ある若者の姿そのものでした」


先生は父の名を大切なもののように口にする。親しみを込めて。


そのように父の名を誰かが口にするのを初めて聞いた気がする。母はもちろん、同じ派閥の人ですら父を呼ぶときは役職か家名をつかって、つねに一線を引いている。


相槌を打つのも忘れていた私を気にすることなく、先生は話を続ける。


勉強熱心で、つぎつぎと知識を吸収していく有能な若者のことを。賢く、それでいて驕らず、思いやり深い彼の姿に、自分がこの国の未来を見たことを。


流れてくる先生の言葉は、どれも私の知らぬ他人について語っているようにしか思えなかった。父ではなく、別の場所で懸命に生きる、誠実などこかの誰かの人生を聞かされているかのように。


「政治、道理、法の成り立ち――儂が知るすべてを教えました。……思い上がっておりました。教えるという行為に。答えを知っている者が知らぬ者にたいしてもつ優越感、儂はそれに溺れておったのやもしれません」


「……なにがあったのですか?」


昔の父を語るときのラパント卿の目は輝いていた。それが一瞬にして失われる。


「ジュードの聡明さは貴族の中でも抜きんでておりました。やがて、儂の手伝いとして評議院に顔を出すうちにほかの議員にも顔をおぼえられるようになったのです。彼の素晴らしさは皆に伝わり、成人すると同時に推薦を受け評議院議員となり、史上最年少で宰相として選ばれました」


驚いた。てっきり、裏からなにかを使って父は宰相の席を手に入れたのだとばかり思っていたから。その若さで純粋に選ばれるとは、本当に父は優秀だったのだ。


けれど、そのこととラパント卿の表情の暗さが結びつかない。少なくとも今までの話のなかで、先生を翳らせるような情報はなかったはず。


「ほどなくジュードは宰相になったことで、身をもって知ることとなりました。彼が信じていた法と秩序は、この場所でいかようにも捏ねられ形を変えるものなのだ、と。評議院とは無数の毒蛇が蠢く大壺のようなもの。通用するのは富と権力という名の牙でしかなく、その牙から垂れる不正という毒で、満たされている場所なのだと」


先生は語る。


父の苦労を。なんとかその場所で正しくあろうと懸命にあがく青年の姿を。


「今でこそジュードは宰相として議会を先導している身ですが、当時は彼の立場もまた弱く、評議院にいいように食いものにされておりましてな」


「父が、ですか……?」


今の冷酷な姿しか知らない私には、そのように翻弄される弱い父は想像もつかない。私の口から思わず零れた疑いの言葉に、先生は身内の愚かさを恥じるように下を向いた。


「ジュードが宰相に就任できたのは、優秀であったからではなかった。むろん、賢さは必要ではあったが、それ以上に若いがゆえに操りやすいとみられたからです」


そこで言葉をきって、一瞬言い淀むようにして私を見据える。


「そうしてある年、山間のキャプロンという小さな村で、疫病が発生しました――『黄変病』という病でしてな、初期に対応すれば治療も可能で、ただし病が進行すれば助かる確率は非常に低く、伝染もするため、ひとたび患者がでれば収束したと断定されるまで地区ごと封鎖され往来が禁じられるほどであったのです」


私の表情に、当該の知識がないことを見て取ったのだろう。先生は立ち上がると、書棚から一冊の本を抜き出し、ある頁を開いて私の前に差し出す。黄変病について書かれている箇所だ。


進行すれば臓器がただれ周辺と癒着し、それが皮膚にすけて茶色から黄色にみえることからそう呼ばれるのだという。末尾に項目が追加され、近年有効な治療法が見つかったとも記されている。


「いくつもの不運が重なったのです。黄変病とは基本的には大陸のはるか南の風土病……王国でも南部の国境付近の一部でしか見られることはまずなかったゆえに、最初は気づかれなかった。また村に広がったあとも国へ支援を求めた訴状がちがう部署への書類の中に混れこんでしまい、発見が遅れたのです。ようやく評議院が問題を把握したころには、すでに村中に蔓延しておりました」


「どうなったのですか?」


「直ちに対策が話し合われ――感染の拡大を懸念し、封鎖すべきだという者もおりましたが、医師を派遣し、助けられるものは助け、死を待つ者にはせめて苦痛を緩和してやるべきだという意見が大半を占めておりました。対処が遅れたのは国の過ちであるがゆえ、せめてそれだけでもすべきであり、それにまだ病にかかっていない者もいるかもしれない。助けるべきだと。南の病が北で起こった原因も突き止める必要があり、ジュードは救済案を支持しました」


「では、村に医師が行ったのですね?」


私の言葉に先生はちからなく首を振る。


「――ところが採決がとられようとしたその瞬間、議場に王太王后殿下……当時の妃殿下がお見えになったのです。そしてこう仰られた。“南部出身のニンス家はその病の恐ろしさを知っておる。救済策など無用。国のために今すぐ村を焼き払え”と」


「ですが、王太王后様は評議院議員ではないのですから強制力もなく、院が従う必要はないはず」


「当時の議会は妃殿下の兄であるニンス卿の派閥だけがちからをもつ一強他弱の状態でした。彼らの機嫌をひとたび損ねれば誰もが政界から追い落とされかねない。そしてその影響は、残念なことに陛下も逃れられなかったのです。救済策は却下されました。それでもジュードは最後まで戦いました。ひとり、王の元へ通い、諫め、覆そうとした。民を見捨ててはならないと王令を求めました。しかし、ニンス一派と妃殿下の妨害もあり、最後までかなわぬままに……村は焼き払われました」


「なんて惨い……」


「……そして、その一件はジュードを打ちのめしたのです。完膚なきまでに。次に彼と顔を合わせたとき、あの最初に見た目の輝きは消えておりました。良い政治家になると、思っておったのですが……」


ラパント卿のため息は、まるで抑え込んでいたものがとうとうあふれて漏れてしまったかのようにきこえた。呑み込み切れなかったからこそ、その後悔が大きかったことを示唆していた。


「儂は村もジュードも守ってやれなかった……未来ある若者が政治の摩擦によって潰れていくのを見るのは耐えられません……」


ラパント卿は過去を否定するように首を横に振りながら言った。


そのあまりにも暗い声は、政治に失望したのが父だけではないのだと私に思わせた。


だから、政界から身を引いたのね。誰ともかかわらないように、どの立場にも立たず、生きるようになった。


自分のせいでひとりの若者が、希望と輝きに満ちていた青年の心が、壊れてしまったと思ったから。


そして人嫌いのはずの先生がときどき父の招きにだけは応じていたのも、理由がわかった。ずっと父のことを心配してくれていたのだ。


「もしかして、先生は……」


先生はきっと私が猫をかぶっているのも、たくさん嘘をついているのもわかっていて、それでもなお私を気遣ってこの役目をひきうけたのだ。父を見ていたから……私が父の娘だから、せめてもの罪滅ぼしに、と。


カイルのおまけではなく、私のためにカイルの教育係を引き受け、遠ざけていた政争にも再び身を置くことを決意した。


夜会のとき、子どもが好きだと言ったのもわざとなのだ。私塾を開いていたのだから、父も疑わないだろう。父に疑いをもたせることなくカイルのことを口にさせることで、王宮に行き私に会うきっかけをつくらせた。


私も父もそれぞれが望む方向に話を持っていけたと思っていたけれど、そのことすら、じつは先生に誘導されていただけなのかもしれない。


こちらの憶測を裏付けるように、ラパント卿は肩を落とし儚い笑みを浮かべ、私を見ながら言った。


「あの晩、ジュードが現れたとたん、何もかもが失せ、おびえだけが残った娘を目にしたとき、まわりまわって儂の罪がまたひとつ積み重なったように思えました」


先生はそれきり固く口を閉ざし首を垂れた。まるで裁判官の前で判決がくだされるのを待つ人のように。


そのさまで気が付いた。これは告解――罪の告白でもあったのだ。父の人生を語ると同時に、先生は己が胸の内に潜む罪悪感とその理由を私に伝えてきていたのだ。


「先生の――罪ではありませんわ」


私は身を乗り出し、テーブルの上でぎゅっと固く結ばれている先生の拳に手を重ねる。


「私がいまも問題なく居られるのは、先生のおかげなのですから、どうかそのようなことをおっしゃらないでください」


むしろ汚点にまみれているのはこちらのほうである。


知らなかったとはいえ、先生の優しさを――その罪悪感を今まで利用していたのはほかの誰でもないこの私なのだから。


「そうであれば、良いのですが……」


「先生は以前仰られましたわ。私とカイル殿下の教導役に就いたことで教育のすばらしさを再認識できた、と。学ぶことで私は先生に助けられ、教えることで先生もまた過去の荷の幾つかをおろすことができる。だとするなら、私たちの関係は理想の形なのではないでしょうか。どうか、後悔で私たちのあいだにある絆を貶めるような真似はおやめください」


私は師弟の情を強調する。ラパント卿がこういったものに弱いのを知っているから。


落ち込んでいる人を励ますためとはいえ、心のくすぐりに弱い部分をためらいもなく利用できる自分のあさましさには笑うしかない。でも先生が悪いわけではないのは本当だから。


ラパント卿は深く、長い息をついた。すべてを吐きだし、やがて顔をあげたとき、その目はうるみ、口元にはわずかな笑みがたたえられていた。


「ご立派になられましたな。やはり姫様に未来を見た儂の目は間違っていなかった……」


「先生?」


「いやなに、こちらの話です。――ああ、たしか、宰相閣下以外にもお聞きになりたいことがあると仰っておられましたな」


「はい。先生は以前、王宮の侍女長にひっかかりをおぼえてらっしゃいましたね? そののち、何か思いだされたことはありましたか?」


「あれから考えても見たのですが、やはりなにも……」


そういって先生は首を横に振る。


少なくとも侍女長にかんしては先生から情報は得られそうにないようだ。けれど、話を聞く時間はまだもう少しある。ついでとばかりに、私は会話の中で思ったことをラパント卿に訊ねた。


「先ほどのお話で疑問をいだいたのですが、なぜ、妃殿下が評議院に現れたのですか? 常日頃から政策に意見を述べておられたのですか?」


私の疑問に先生は思い返すようにしばし考えに沈み、記憶にある限り後にも先にもその一回のみだったと説明を加える。


「王太王后様はどのような方だったのですか?」


王太王后――つまり、カイルのお祖母様。小説では過去の人物だったからほとんど描写がなかったし、今世でも父に関係するとは思ってもいなかったからくわしく調べたことがなかった。というより資料がほとんど残っていなかった。


王宮に保管されている王家の歴史を記した『王室史典』にすら彼女の名前はほとんど見ることがない。あたかも、誰かが彼女が記録に残るのを嫌がったかのように。


たんに表立った活動をなさらなかっただけなのかと思っていたけれど……。


そのことを告げると、でしょうな、とラパント卿は苦笑した。


「良しとされなかった――いや、よしとされないと分かっていたからこそ、記録者が気を遣ったのでしょう」


「……記録者が気を遣ったお相手とは陛下ですか? それほどまでに王太王后様は疎まれていたのですか?」


私の問いかけにラパント卿は昔を思いだすためか、目をつむった。記憶の中にあるものを呼びよせるように。


「……妃殿下は苛烈な方であった。黒いものを白く塗り直させるような……悪人であったとは言っておりません。ただ、絶対に己の考えを曲げぬ方であった。貴族の中の貴族、伝統を重んじ、身分を重んじ、弁えるものは重用し惜しみなく褒を与えるいっぽうで、沿わぬものには容赦せぬ方であった」


先生は目を開き、さりげない口調で淡々と述べた。


「ある年には王宮から己より若い娘を皆追い出してしまわれた。それから、美しい女子おなごも」


噂には聞いていたけれど、今まで気にしたこともなかった。けれど、今になって思う。


その時期はいつだったのか、と。


……もしかして。


口には出していない。けれど、先生は私の声が聞こえたかのように首を振った。


「はてさて。ただ、その翌年、王室にフレディリク様が御誕生なされた」


さらに口をひらこうとする私を制して、


「どこのはらから、というのは誰も知らぬのです」


「本当にどなたもご存じないのですか?」


「……調べればわかることゆえ口にはしますが、天真爛漫で美しい、陛下がよく目をかけられていた使用人はおりました。しかし、結局は王太王后殿下にも分からず、だからこそ、めぼしい女をすべて追い出してしまわれたのでしょう」


「陛下はそういう王太王后様のご気質を忌避されていらしたのですか?」


「というよりは他の方を忘れられなかったのでしょう……陛下にはもともと別の婚約者がいらしたのです。当時のノヴェルティ侯爵の娘で、それはとても美しく、幼い頃から陛下とも仲睦まじいご様子であられた」


「ノヴェルティ家の……? そのようなこと、初めてうかがいましたわ」


父の口から発せられたときと同じくらい衝撃を受けた。まさか、ここで再びその名を耳にしようとは。


娘というのは、おそらく先代のノヴェルティ侯爵――あの車椅子の人物の妹にあたるのだろう。たしかふたりおり、そのどちらも若くして亡くなっている。しかし、どちらかの令嬢が婚約者であったという情報は出てこなかった。というより、とうに亡くなっているという以外なんの情報も得られなかったのだ。


「ご令嬢はお体が弱くていらしたのでしょうか? そのためにニンス家の娘に婚姻を変更なさったのですか?」


王宮に飾ってある王太王后の肖像画を見たことがあった。肖像画とはたいてい画家の世辞が入っているものだけれど、それを差し引いても彼女は少なくとも美人とは言い難い容姿だった。


醜女とまではいかずとも、どことなく陰気で華がない。先王もカイルも王族の血を色濃く受け継いでいて美しい容貌であるから、最初にその絵を見たときにはそれが王太王后のものだとはにわかには信じられなかったくらいだ。


私の疑問にラパント卿は黙ったままだった。どこまでも沈黙が続き、このまま話を終わらせるつもりかと諦めかけたとき、ようやく重い口を開いた。


「姫様はいずれ殿下とともにこの国を背負われる身……ならば、知っておいたほうがよいのやもしれませぬな。……ある晩、ノヴェルティ侯爵令嬢は暴漢に襲われ、顔に生涯治らぬ大やけどを――命は助かったものの、さいごにはそれを苦に自らこの世を去ってしまわれたのです」


「そのようなことが……」


「そこに、今のニンス卿がすかさず己の妹を差し出したのです。ニンスの娘なら、たとえ顔を焼かれても役目を放棄することはない、と言いましてな」


何という言いぐさだろう。


苦々しくラパント卿は当時のニンス卿の言葉を繰り返す。眉間の深いしわが、なによりも先生の気持ちを物語っていた。当時を知らない私でも不快に思うくらいだ。


それを言われた陛下もまたどう思われただろう。


ノヴェルティ家がニンス家を恨んでいるのはこの件があったからなのだろうか。侯爵家の娘に降りかかった不幸を踏み台にするようにして、ニンス家がのしあがったから。


「先生、亡くなられたのは陛下の婚約者であったお嬢様おひとりなのですか?」


ノヴェルティ卿は、3人と言っていた。ほかに2人、ノヴェルティ家の誰かが事件にいっしょに巻き込まれたのではないか。そう推察する私に先生は渋面をつくり、


「なぜ、そのようなことを?」


「……口さがないことを申しました。ただ、以前重ねて悲しい思いをしたのだとノヴェルティ家の方からうかがっておりましたので……」


「ああ、そういうことでしたか。……たしかに、侯爵にはもうひとり、姉に生き写しの末の娘がいらした。そのご令嬢も数年とたたず病で亡くなっておられたはずですが……」


もうひとりの妹はともかく、三人目となる人物に思い当たるようなひとはいないらしい。


一瞬、先代侯爵に会ったこと、ノヴェルティ家のニンス家に対する根深い恨みなどを先生に相談しようかと迷った。そうすれば今後、私に有利な、取引の材料になるような何かを得られるかもしれない。


けれど、寸でのところで思いとどまった。


これ以上先生を政争に巻き込むわけにはいかない。自分の都合にも利用したくなかった。


「先生、ありがとうございました」


「なにかのお役に立てましたかな?」


「はい……おそらく」


先生の言葉がのみのように、私の中の父の像に知らなかった新たな面を刻んでいた。


正義心に満ちた青年は宰相になったことで誰よりも政治の中枢に立ち、すべてを見たのだろう。


中央政治の腐敗と王族の権威の失調を。好き勝手に暴れまわる馬と、それを御すことのできない気の弱い御者を。


そして落胆し、やがて自らが手綱をとろうと決意した。


――たぶん、父は王族を見限ったのだ。


傀儡政権など初めから狙っていなかった。私は父の保険ではなかった。


父の道は初めからひとつ。


絶対にカイルを殺すつもりなのだ。そして、いずれはフレディリク様も。

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