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セヴレイルとヴェンリルの対立

「身の程知らずもここまで来ると恐ろしい。

幾ら名分が同じ使徒家と言ったところで、真なる貴族であらせられる当主様と比べられるはずもないというのに」

「教祖様は境域を守護するため、そして教徒の心を戒めるためにヴェンリルを引き入れたのでしょう。

それ以上の何物でもありません」

「あのような輩は、気狂いどもを殺すためだけの道具として使うのが、分相応の扱いというものです。

我らに並び立つなぞ悍ましい。

これ以上図に乗らぬよう、立場を知らしめねばなりません」


それはとんでもないことであった。

彼らとしては、下々が貴族のために戦って死ぬのは当然である。

そう心の底から思っている。

ましてその命に反発するなど彼らの価値観では有り得ないことであった。

払った犠牲が無駄になるから何だというのだ、それまでに結果を出せなかった方が悪い。

二百年に渡って受け継いできた宿願の前では、木端のような者たちの命が何ほどのものであろうか。


「あの一件で、あの家の者共の正体をまざまざと思い知らされました。

あの家は親子揃って気狂いなのだから、まともに取り合わず利用するのが正しいのです」

「教徒らしく装っていても所詮は血に飢えた餓狼、商団の悪鬼どもと何ら変わりはしませぬ。

だというのに、猊下は妙にあの狂犬に甘くていらっしゃる。

やはり近縁だからか……」

「猊下はまだお若く、充分にものが見えておられない。

しかしながら教団を背負う掛け替えのない御方、道を誤ってからでは遅うございます。

当主様がお支え申し上げなければならないのです」


妙な方向に向かいそうだったので、加熱しそうになる空気をそれとなく窘めることにした。

レイグから見て十年下の主君。

当主になってより、かの教主に臣として正しい道を示せと、常に言われてきた。

それが彼らの思う忠節であった。

空気に蔓延するそれらが当主であるレイグの元に押し寄せ、無言の重圧となって伸し掛かる。


「――分かっているな?」


いつしか、隣から肩を掴まれていた。

ぎりぎりと力を込められるのに眉も動かさず、父の声を無言で聞く。


「父祖の名にかけて、下賤の者に嘲罵されたまま済ませるなど、断じて許されない。

家督を継いだ以上若さなど何の言い訳にもならぬ。

お前の肩にはセヴレイルの家名が乗っているのだ。くれぐれもしくじるなよ」

「はい、父上。心得ております。全てお任せを」


レイグは淡々と答える。負けるはずもない。負けてはならない。


異端を排し、聖都の色を統一する。それが彼らの総意であった。


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