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ファラード家の当主

ともあれ、ここまで来ればあと一息である。

最後に会ったのはファラード家の当主だった。

相手もこちらの動向を窺っていたようで、向かった途端当主の元へ通された。


「ソリス様、御機嫌よう。

先日寝付いてしまわれたと聞きましたが、今宵こうしてお会いできて何よりです」

「ええ、聖者様。

その節は御見舞の書状を頂きありがとうございました。

ご心配をおかけしてしまったようで恐縮です。

……聖者様もお変わりなく、お元気そうで何よりです」


最後に会ったファラード家の当主は、暗赤色の髪に榛色の目をした少年だった。

その顔立ちは、これまでに見た使徒家面々の例に漏れず美しい。

特に目が印象的で、どことなく猫を思わせる。

ただ妙に顔色が悪く、青白いを通り越してそれこそ透き通るようだ。

確かにこれは、虚弱気味という噂もあながち大げさとは言えないのかも知れない。

実物を見てそう思った。


その少年当主の傍には、白髭を蓄えた老人が影のように付き従っていた。

聖者はそちらにも言葉をかける。


「ローサン様も、お元気そうで宜しゅうございました」

「勿体無い仰せにございます、聖者様。

この通りの老体ですが、お陰様で何とかやれております」

「心強いですわ。

色々と大変でしょうけれど、どうかお願いしますね」


聖者とウルレアの言葉に、ローサンと呼ばれた老人は感じ入ったように一礼する。

聖者の挨拶が終われば次はシノレの番だった。

同じように紹介されて、同じように頭を下げる。

何事も、何度もやれば嫌でも慣れる。

ソリスもそれに礼を返し、二言三言やり取りを交わす。

だがそれも、然程長くはかからなかった。


「それじゃあ、無理はしないで。お大事にね」

「ありがとうございます、ウルレア様。

より一層精進して参りますので、今後も宜しくお願い致します」


ファラード家への挨拶はソリスの体調を気遣って、早々に切り上げることになった。

正直拍子抜けするほど、他と比べるべくもなく円滑に終わった。

当主の受け答えも模範的で簡潔で、余分なものが一切無い。

下手を打たないように、付け入る隙を与えないようにと、言動一つ一つに気を張っている感じがした。

当主継承の経緯を思えば無理もない。

寧ろああも好き勝手、直情径行に振る舞うリゼルドの方がおかしいのだろう。

ローサンのみならず、周囲の人間全てが注意してこちらを窺っているのを感じる。


(……まるで人形と人形遣いだな)


その中心でぴたりと寄り添う二人を見て、そんな印象を抱いた。

かくして色々ありつつも、何とかシノレは全ての使徒家への挨拶を終えたのだった。


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