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覚悟

ぽつぽつとやり取りし、情報のすり合わせを済ませる。

所々補足しながら語り終えた聖者も、少し俯いてこめかみを押さえる。


「……私も、リゼルド様については良く知らなかったのです。

先代とは何度かお会いする機会がありましたが、その頃ご家庭で色々とあったようで、大神殿へいらっしゃることすらほぼありませんでした。

その上五年前の件で、慌ただしく当主を継いで聖都を離れ、そのまま………

…まさか、ああいう御方とは」

「三年前に会ったことがあるって言ってたよね。

それなのに良く知らなかったの?」


「ええ。

……三年前、セヴレイル家とリゼルド様が

……その、少々揉めまして、その件で聖都にお立ち寄りになりました。

その際にご挨拶をしましたが、型通りのやり取りのみで終わりました。

……ですからあの方と、会話らしい会話をしたのは、あの時が初めてです」


あの時。言うまでもなく、先日の逃亡騒ぎの件だろう。

そう言えばあの時も、何か気になることを言っていた。

聖者の噂だとか、それを確かめるの何のとか。

あれは結局何だったのか。

ふと浮かんだ疑問は、続いた聖者の声に吹き消された。


「使徒家にも所謂派閥はあります。

中でもカドラスとセヴレイルとベルンフォードは……

聖都における主流、貴族派とでも言うべきもので……

他に対して排他的というか。

特に、リゼルド様については良くお思いでないのです」


先程のレイグの顔が頭を過った。

リゼルドと揉めたらしき、しかも聖者を信奉しているらしき男。

脳内で、その顔が一気にきな臭いものとなる。


「…………え、じゃあさっきのあれ根回しに来たんじゃないの?

大丈夫、巻き込まれない?」

「……私はそうしたことに関与しません。

ずっとそう言ってきました。

…………ですが、そうですね。

貴方に後ろ盾をつけるとすれば、どこかの派閥に与する覚悟が要るでしょうね。

極めて細い糸の上を渡る覚悟が」


強張った物言いに、シノレは怪訝そうに眉を顰める。


「どうしてそこまでするの?

これまでずっと中立でいたのに、利益よりも危険の方が大きくない?」

「それは、そうですが。でも……猊下が……」


聖者は、顔を隠すように俯いた。

猊下と口にした途端、何故か声が細く弱々しいものとなる。

続く言葉も、どうにも要領を得ない。


「私だけならばまだしも、貴方には……いざという時に頼れる宛が必要でしょうから。

ですから、私は……」


そして顔を上げ、聖者はシノレを見据える。

その表情は、明らかに緊張していた。


「――明日はあまり喋らず、動かずに。

けれどよくよく、気を払っておきなさい。

あの場を統べるのは、貴族の法なのですから」


それは静かな声だったが、やはりどうにも不穏なものを感じさせた。


(明日の儀式、本当にどうなることやら……)


半ば他人事感覚とはいえ、流石に少し不安になるシノレだった。



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