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歌の記憶

エルクとオルシーラが意見交換を行う中、

突然、エルクがシノレに話を振ります。

シノレはうっかり教団に来る前のことを話してしまうことに…

今日は、歴史学や詩学の関係者が多い日だった。

積極的に意見を交える人々の中で、オルシーラは穏やかに微笑み受け答えている。


「そして詩歌の十七節――このくだりに出てくる月や星星は、実際の天体ではなく歴史的に重大な事象の暗喩と呼ばれておりまして……ああ、たとえばこの『銀の月』は虚月のことですから、大公家にも縁あるものでありましたな」


「……ええ、その通りですわ。といっても、私も実物を見たことはないのですが。

虚月がまるで、天空を舞う銀盤のような姿であることは、様々な資料で語られていますね」


「今となっては伝説ですからね……完全な状態で保有しているのは、楽団の総帥と騎士団の大公だけであると聞きます」


「ええ、そのようです。……ですが私も皆様と同じくらいのことしか知らないのです。

どこに保管されているかすら教えられていませんもの」


「それはまた、厳重ですね……いえ、ものがものですから、さもありなん、といったところでしょうか」


少し、そこに引っかかった。シノレは、オルシーラの言い回しをよく知っているわけではない。

ただ何だろう。今の受け答えは、何というか、……余計なことを言い過ぎている感じがした。

まるで、何かを誤魔化そうとしているような……だが、そこで思考は途切れた。



「……そう……明日以降は、音楽関係の方々をお呼びすることになっていますね」


「……へ、あ、はい、そうですね?」


エルクがそんな風に、水を向けてきたのだ。

先程までと比べると肩の力が抜け、やや気楽そうな顔をしている。


「シノレは、歌や音楽に興味はありますか?

何か歌ったことはあるでしょうか?」


「え、……あーはい、一応あると思います」


恐らくエルクは無意識に、「教団に来てから」という限定的な意味合いで聞いたのだろう。

しかしシノレはその流れに、全く別のことを思い浮かべてしまった。


そう、昔何度か、歌わされたことがあった気がする。

魔除けだからと言われて。

確かあれは、ある日流れてきた娼婦が歌って聞かせた――


「えっと確か、そう……妖女殺しの歌っていう……」


そして、一瞬にして空気が固まった。



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