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中庸と均衡

教団は強固な身分社会。

当然、それに反発する勢力が生じます。

ウィリスはこれらの「改革派」への対策のため、マーレンに来たのでした。


教団は、神の前での平等を謳いながらも実態は強烈な身分社会だ。

しかし楽団のように弱者を故なく切り捨て、死ぬまで搾取するようなことはない。


血筋は呪縛であると同時に、確たる居場所を与えるものでもある。

生まれながらに与えられた立場から逸脱しない限り、最低限の待遇と安全は約束されている。


一方で、他者との繋がりが密接であるが故に、本人に責任のない事柄でその恩寵から零れ落ちる者たちも存在する。

身内の不祥事によって失脚したり、先祖代々の教徒ではないからと理不尽を負わされたり。

そういう者たちが、現体制に疑問や不満を持つようになるのも自然な成り行きだ。


その手の者たちを野放しにしておくよりは、使徒家のどこかが理解を示して手綱を握っておいた方が良い。

十五代目教主ヘレディクの御代、そうした思惑で選ばれたのがベルンフォードとファラードだった。


この二つの家が選ばれた理由は単純なものだ。

ワーレンは論外として、忠勤だが頑固な節のあるザーリア―とカドラスでは論争からの決裂に雪崩れ込む危険がある。


セヴレイルにとっては下々の相手は命じる者であり、意見を聞いたり宥めたりする対象ではない。

シュデースは当時異教徒の襲撃による壊滅からの再興で大わらわで、加えて今より更に使徒家内での軽視が激しくそれどころではなかった。

ヴェンリルは戦争特化の家であるし、数代先まで教団に属している保障がない。

というか下手に預けたら一緒になって裏切られかねない。

となれば、消去法でベルンフォードかファラードだ。ここまで絞った時の教主は、結局どちらかに決めず二つの家に調停を託すことを選んだ。


教団の核となる、中庸と均衡を是とする考えである。

下手に一つの家に全権を預けるより調整しやすく、均衡が保ちやすい。

情報の偏りも避けられる。

どちらかの家が亀裂を生んでももう片方が修復すれば良いし、どちらかが取り込まれそうになった場合ももう片方の目が抑止力となる。


元々使徒家は、ともに教団を支える礎であると同時に、腐敗や堕落を抑止しあい、互いを監視し合う関係だ。

そのための制度も種々存在し、婚姻すらもその一環だった。


時には使徒家の者が、公にその意を代弁することすらある。

一般人がすれば無事では済まない現体制批判も、使徒家がするのなら「高貴な教養人のご意見」と好意的に取られることが多いからだ。

無論、各方面に相応の根回しをしておく必要があるが。


とにかくこういうわけで、教団に属しながら不満がある者は、身元を明かし改革派に属するのであれば、ある程度の発言や言論を認められるのである。

奇異の目で見られはするが、余程のことがなければ咎めを受けることはない。

まあ、余程の場合であれば異端審問に引き渡されることになるが。


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