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離反

「……っ……っはあ……」

体の中に、一気に自分が戻ってきて、その反動のように異様な重力を感じる。

時間にして一時間も経っていないだろうに、何時間も鍛錬した後のように感じる。

体が鉛のように重いが疲労にかかずらってはいられない。

後に引くつもりはないのだし。それにしても。


「……こんなのばれたら、直ぐ様異端審問行きだろうなあ」


その場合、罪状は何だろうか。

さしずめ「邪法を操って聖者様を誑かし聖都を堕落せしめんとした化け物」といったところだろうか。

そして噂に聞くヴェンリル家の審問にかけられ、あることないこと吐かされて、最終的には考えたくもないようなやり方で処分されるのが関の山だろう。

ぞっとしない話だ。来たくて来たわけでもないというのに。


頭を振り、切り替える。音を立てずに静かに外に出た。


「…………それじゃまあ、行くか」

一歩外に出た途端、しんと冷たい風が吹き抜けた。

案の定、外には月が輝き、道は明るく照らし出されていた。

もう一度髪から針金を取り出して、扉を外から施錠し直す。

軽く点検した後、地面を這いずるように聖堂を離れた。


(正面だと、監視がいるかもしれないし)


物陰から物陰に移るようにして移動し、夜の中を忍んで行く。

まずは夕方立ち寄った木の根元へ行き、隠していた小包を引っ張り出した。


「……なるべく小さく、場所を変えて隠せば気づかれないものだね。あちこち結構緩い。まあ、ここに入るまでが難問だからだろうけど」


念の為準備しておいて良かった。

やはり備えがあれば、いざとなっても困ることがない。

数カ所に分けて隠しておいたものを、担いだ袋に放り込んだ。

そんな風に何度か寄り道をしながら進んでいき、やがて最終目的地が見えた。

内部からは薄く灯が漏れている。

その扉の脇に忍び寄り、遠くに石を投げつけて音を立てる。

潜んでいた気配がざわざわと離れるのを確認して、扉の中へ滑り込んだ。


尋ね人は相変わらず動いていないようだった。

生物から彫刻になってしまったかのように、祈る姿は静かなものだ。

その後姿に無造作に歩み寄り、短剣を押し付けた。


「――――動くな」


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