表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
378/487

目的の物

遠くに戦火の気配を感じながら、シノレは街の様子をうかがいます。

その時、思いがけず目に留まったものは…


お守りに入れる鍵のチャームを探す道のりは、案の定長丁場になった。

あちこち路地に入って、雑貨店や古道具屋を色々回ったのだが、やはり件の香水瓶は見つからなかった。


「次行きましょう、シノレ!」

「……はい」


返事して、ユミルの後を追いながらも、シノレは西の空を見つめた。

あの下では多分、今にも火種が弾けようとしている。


弱者の本能と言うべきだろうか。シノレには、そういうものは何となく分かる。

周りにいる人間が、どうして気づかないのか不思議なくらいには、戦火の足音がはっきり聞こえる。

けれど――


(……改めて見返してみるとここも、ただ脳天気な街ではないな……)


前に街を巡った時には気づかなかったが……街のあちこちに、危急の時に備えた仕掛けが散りばめられている。


例えば、そこかしこに見える屋台。その殆どは折り畳みが可能な構造だ。

状況に応じてすぐさま撤去・転用が可能だろうし、台車や樽の類も、封鎖の柵としても使えるよう作られているのが分かる。


ジグザグと入り組んだ道や建物の配置といい、全体的に「守るため」の作りが徹底されている。

初代使徒を模した、あの無駄にでかい上に陰気極まりない記念碑や銅像にしたって、市内が戦場になれば立派な遮蔽物として機能することだろう。

そんなことを考えながら、シノレは周りを見て歩を進めていた。だから、気づけたのだろうか。


思いがけないところで旅路は終わることになる。

そこはどこにでもあるような、道端にある普通の露店だった。


「うーーん…………」


ユミルは悩む素振りで、数歩先を歩いている。シノレも何気なく通り過ぎようとして、(あれ?)と足を止めた。

何か違和感を覚えた。視界の端に、気にかかるものが映ったような…………シノレは立ち止まり、周囲をじっくりと観察する。

そして一点で目を見開く。振り向いて、今し方通り過ぎた露店の品に目を凝らした。

シノレは実物を知っているわけではないが、それは――


「あの……ユミル様。あれ、お探しのものではありませんか?」


「え?……ぁ、あれっ、はい……え!?」


何気なく顔を向けたユミルが、やや目を見開く。

一瞬視線を外し、そして勢いよく戻す。

次の瞬間、ユミルは、露店の真ん前に走り込んでいた。

店番の男があまりの勢いに怯んだようで、ぎょっとした顔で身を引く。


「こ、こ、これどうしてあるんですか!?!?」


いきなり詰め寄ってきた、飛び切り身なりの良い少年に、商人は「ど、どうしたんだ坊っちゃん」と慌てふためいた様子を見せる。


「このチャーム、ずっと探してたんです!!

どこに行ってもなかったのに、ここで出会えるなんて!!」


「あ、ああそうかい……これはね、さっき通りがかった女の人が置いていったんだよ。

丁度通る時に荷物を落としてしまって、拾う手伝いをしたら、お礼に商品にしてくれって」


商人の口から、商品の経緯が語られる。話し方からして本当に、つい先程のことだったようだ。

それは奇跡、偶然と呼んで良いものだった。


「それじゃあ買うのかい、坊っちゃん」


「勿論です!!」


辿り着いた終点に、ユミルは両手を上げて喜んだ。

懐に勢いよく手を突っ込み、商人の手に金貨を無造作に押し付けた。

ついていけず目を白黒させる商人にも構わず、やったやったと飛び上がって、シノレに笑顔を向ける。


「素晴らしい巡り合わせもあるものですね!幸運でした!」


「……良かったですね」


何だか、話が上手すぎる気もしたが……………シノレは深く考えないことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ