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クレドア家の竪琴

シノレはユミルとともに竪琴を移動させるため奥部屋に向かいます。

そこで竪琴の調整をしていたオルシーラ姫は、ユミルに聞きたいことがあるようで…


 ユミルに促されて挨拶し、相手の返礼を確認して後を追う。

時々話しかけられながらもまた会場に入り、二人で廊下を進んでいく。

大半が会場内か、離れた場所にいるらしく、辺りに殆ど人気はない。

向かう先は、廊下を数本抜けた先の奥部屋だ。


 彼らがそこに向かうのは、月の始めに決まった演目の準備のためだ。

オルシーラが演奏する予定の、クレドア家所有の竪琴だった。

今から彼らは、それを迎えに行くのだ。


 シノレとユミルで竪琴の持ち運びをすることになったのだ。

指示された部屋に行くとオルシーラがいて、細い指先で弦に触れている。

調整でもしていたのだろうか。

振り返った彼女の胸元では、以前と同じ青の宝石の首飾りが揺れていた。


(にしても、この竪琴案外大きい……)


 これは落とさないよう、気合を入れて運ばないといけなさそうだ。

目的の竪琴に見入っているシノレを置いて、ユミルが「御機嫌よう、オルシーラ姫!!いい夜ですね!」と明るく挨拶する。

オルシーラもそれに顔を上げ、優美な落ち着いた声で返す。


「……御機嫌よう。ユミル様。直々においで下さったのですね」


「はい!今夜の大事な演目ですからね……それでは、こちらお運びしますね!」


「はい、お願いします。もう大丈夫ですので」


 そこでやり取りは終わりかと思えば、オルシーラがもの問いたげにユミルを見つめる。

ユミルもすぐに気づき、一旦竪琴から離れ、ぴっと背筋を伸ばして問いかけた。


「オルシーラ姫、何か?お気に掛かっていることでもあるのでしょうか?」


「…………ええ、そうなのです。しかし、とても不躾で浅薄な疑問ですから、ご不快に思われたら答えなくて構いません」


 床の上で絹とレースの波が、優雅な衣擦れを響かせる。

オルシーラはするりとドレスの裾を捌き、ユミルに向き合った。

ゆっくりと慎重な口調で前置きをしてから、意を決した様子で聞いた。


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