表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
345/480

歓迎の宴

教団において教主を排出しているワーレン家の人物の歓迎の宴。その主役は現教主の弟、エレクだった。

彼は騎士団大公家の姫、オルシーラの歓待のために聖都を出てきたのであった。


 添えられているのは至極小さな、それでいて瀟洒な彫り込みがされたフォークだった。

果肉を刺し、品よく口に運ぶ。

よく冷やしてあるようで、口に入れた瞬間ひやりと冷感が広がった。


「……大変素晴らしいですわ」


「まあ、お口にあって良かったです。

セネロスの方にお認め頂ければ、自信がつきますわ」


 今宵はワーレン家の人物の、到着歓迎の宴である。

歓迎の意を表すために異例の贅沢が振る舞われると、最近は専らの噂であった。


それは一体どのようなものなのだろうと、オルシーラも気にするところだった。

流れで余興を振る舞うことになった今となっては、失敗して空気を壊してはいけないという思いもある。


 どよめきが広がっていく。

彼らが視線を向ける先に、オルシーラも目を向けた。

銀髪の少年が、レイグとともに入場して来るところだった。


何やら語らっている様子で、こちらに横顔を向ける彼は、現教主の異母弟だと聞いている。

端然とした姿勢で、繊細ながらもどこか鋭利な面差しの少年だった。

庶子という言葉からは想像できないような、悠然とした佇まいだ。

ちらちらと視線を送っていたオルシーラに、また新たな声がかかった。


「オルシーラ姫、楽しんでおられますか?」


「あら、シオン様。御機嫌よう」


 彼女が訪れてからというもの、何かと世話をしてくれていた。

そんなこともあり、多少なりとも気心の知れた間柄だ。

オルシーラは微笑んで会釈した。


挨拶を交わしてから、話はエルクのことになる。

気にしていたのに気づかれていたらしい。

オルシーラはややはにかむ表情を見せ、首肯した。


「あの方が、エルク様なのですね。

実際にお会いしたことはありませんのに、演奏のこともあって何かと意識してきたものですから、何だか不思議な感じが致します」


「ワーレン家の方々は、聖都を出ることもそうそうありません。

エルク様がいらしたのは、猊下のオルシーラ姫へのお心尽くしかと拝察します」


「恐縮ですわ。御本人とも、いつかお会いしてみたいものです。

偉大な教主であられたという先代様に、似ておられるのでしょうか」


「いえ、猊下は母君に似ておいでです。

先代猊下やご父君の面影がおありなのは、どちらかと言えばエルク様の方ですね」


「まあ、そうなのですか」


 オルシーラは相槌を打ち、改めてエルクを見やった。

彼女は他のワーレン家と直接の面識はないから、面影を照合することはできないが系図は頭に入っている。

先代教主クローヴィスとその弟。

更にもう一人、妹も存命だと聞く。

そんなことを考えている内に、空気の流れが僅かに変わるのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ