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木陰の昼食

 狩りの訓練が一段落した頃には昼間になっていて、近場の木陰で昼食にすることになった。


ここまで暑さが激しくなると、馬たちもだれ気味になってくる。

これから本格的に夏に入るから、昼になったら切り上げようと提唱したのはシオンだった。


「今日はこのくらいにしましょうか。

獲った獲物は持ち帰って、城の厨房に任せましょう」


「中々の成果でしたね!

レイグ様や聖者様にも召し上がって頂きたいです!」


 ユミルはにこにこと、燻した鴨肉を挟んだパンを口に運ぶ。

元気よく頬張りそうに見えたが、使徒家だけあって品を欠く食べ方はしない。

見苦しくないくらいの量を素早く咀嚼し、素早く飲み込み、合間に喋る。

それらがぽんぽんと軽快に反復する様は、見ていて快いほどだった。


「ブライアン殿の身ごなしも、かなり形になってきましたね。

これなら充分好成績を狙えると思います」


「ありがとうございます、お二人共……!

他にもまだ改善の余地や学ぶことはあるでしょうか?」


「そうですね……勢子や猟犬との連携でしょうか。

彼らは専門家ですから、心置きなく頼って良いと思います。

狩りは一人でするものじゃないですし、焦らず騒がず常に周りに気を配ることが成功に繋がるかと!

それと、ブライアン殿は少々気負いがあると見受けます!」


「それは……はい。彼女との未来がかかっておりますから、是が非でも優勝を勝ち取らなければ……」


 ブライアンの顔に、僅かな曇が生じる。

特訓を経て自信はついてきたようだが、だからといって重圧や緊張がなくなったわけではないらしい。

寧ろ増えているのではないだろうか。

そんな彼にユミルは、いつも通りの明るい声で畳み掛けた。


「確かに優勝によって得られるものは大きいでしょう!

出しうる最大限の結果を求めるには、緊張も必要です。

ですが、これが唯一最後の機会とまで思い詰める必要はないと思います!

諦めなければ機会は訪れるはずです!

緊張しきらず、程よく力を抜くのです!

それが全力を出す秘訣だと思います!」


 金髪を揺らして熱弁し、ユミルは青年を元気づける。


そんなやり取りを聞きながら、シノレは持ってきた薄荷茶を飲んでいた。

最近はどうも食欲が落ちていて、こういうものの方が喉越しが良い。

薄荷を使ったそれは冷涼な味わいで、風も相まって涼やかな気持ちになる。

流れといえばそれまでだが、どうして自分はここにいるのだろうか……そんな疑問が止まない。

黙々と茶を飲みながらそうしていると、近づいてきたシオンが声を掛けてきた。


「シノレ君、食が進んでいないようですが……疲れましたか?」


「あーいえ、その……」


 対応に迷って、自分の分のパンに目を落とす。

確かにあまり食べられていないが、無理に詰め込むのもまずい気がする。

答えに迷っていたところ、ブライアンとの会話を一区切りさせたユミルが入ってきた。


「……ところでシオン、僕はまだやれますけれどもう少しなにかありませんか!?

最近は皆どうしてか元気がなくて、鍛錬にも張り合いが少ないです!」


 ユミルは暑気などものともせず、一際元気に満ち溢れている。

そればかりか現在の鍛錬では物足りないそうだ。そう言われたシオンも、負けず劣らず溌溂と提案した。

「では、明日からは早駆けと障害物競走も追加してみましょうか。以前ご一緒した演習で、リゼルド様も大層喜んでくださったんですよ」

「リ、リゼルド殿がですか!?やります!絶対やりますやらせて下さい!!」

 その一言でユミルの目の色が変わった。大盛り上がりするカドラス家たちを横目に、シノレはまた良い風が吹かないかなあと考えていた。



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