狩りの練習
一方のシノレは炎天下で、元々生気に欠けた目を更に濁らせていた。
それもこれも日々増していく暑さのせいである。
もう月も半ばを超え、夏もいよいよ本番だ。
彼らは今日も今日とて馬術訓練、射撃訓練に励んでいた。
ここ最近は北山の方で特訓続きだった。
狩りの練習なのだから、実際の舞台となる場所で実践するのが一番だ。
特に関係ないはずの自分が、どうして毎回毎回連れ出されるのかは分からないが。
「ブライアン殿、ちょっと手元がぶれています!
馬の制御も同時にできるようになっていかないと、動作が安定しませんよ!」
「は、はい!ありがとうございます!」
本番の狩猟祭は、自然に生息する動物を狩るというものではない。
勿論そういうこともあるが――主役はこの催しのために、その分野の専門家や管理師たちが丹精込めて育てた獲物たちである。
中でも最上等の獲物――シオンが優勝した時は鹿だったらしい――を仕留めることで、優秀者として評価される。
しかしそれも、ただ仕留めれば良いというものでもないらしい。
「なるべく一撃で仕留めるのです。
獲物を苦しめてはいけません。
狩りという行為は自然の恵みに感謝し、命を頂くことです。
無駄に傷つければ減点されますよ!」
シオンの威勢のいい声と、銃声が響き渡る。
銃などというのはシノレの基準では特権階級の持ち物、弾を惜しんでおいそれと使われることさえないものだが、ここでは当たり前に使用されるようだ。
そして本番がそうだからといって、練習の段階でも惜しげもなく使われるのも驚きだ。
「ほら、来ますよ!」
「――そこです、よく狙って下さい!」
熱を帯びていく指導から、やや離れたところでシノレは適当に馬を操っていた。
一応自分の銃は持っているが、今のところ撃つ気はない。
別にシノレは狩猟祭に出るつもりもないのだし、あまりやる気はなかった。
自分が怪我をしないこと、人にも怪我をさせないことが最優先だ。後は適当でいい。
乗馬はただでさえ危険を伴うのだから、隅々まで気を配る余裕がない。
今の彼には安全面に気を配ることが最も重要だった。
聖都でも射撃訓練は受けていたが、馬上からとなるとかなり難易度が上がる。
反動を受け流し体勢を保つだけでも一苦労だ。
最近はあまり眠れていないこともあり、体力や集中力の消耗が早い。
あまり良好でない体調でしたいことではないのだ。
しかし緑豊かな山近くで馬を走らせること自体は嫌ではない。寧ろ中々爽快だ。
シノレは軽く馬の首を叩き、澄んだ空気を取り入れようと深呼吸した。
各地で色々思惑が動いています。一方のシノレは夏バテ気味です




