狩猟祭の噂
狩猟祭の話、そしてブライアンに提示された賭けは、瞬く間に噂となって駆け巡った。
オルシーラは招かれたお茶会で、意味ありげに微笑み合う令嬢たちを前に愛想笑いを浮かべる。
彼女たちはいづれも、この城に出入りする中でも特に位の高い家柄の者たちである。
「ふふ、愉快なことになりましたこと!」
「少し憧れますわね。どうなるのでしょうか」
「まあ、我が家では笑い事ではありませんのよ。
ブライアン様の強情さに、父はすっかりお冠で……」
ブライアンとリヴィア。
些細な不運から破綻寸前の劇的なロマンスは、あちこちで格好の茶請けにされていた。
令嬢たちは賑々しく語らい、それぞれの立場から意見を述べる。
「狩猟祭は例年のことですが、早速盛り上がってまいりましたこと。少々楽しみになってきました」
「そうね。来月のお客人方も、きっと楽しんで下さるに違いないわ」
オルシーラはそこで、「来月のお客人方?」と首を傾げる。
それを聞き取って、一旦流れが途切れた。
少女たちは優雅に視線を向け、口々に解説を始める。
「ああ、オルシーラ姫はご存知ありませんよね。言わば、狩猟祭の前座ですわ」
「再来月から始まる狩猟祭。その前夜祭として、その年功績を上げた学者や軍人を招くのです」
「彼らはその間あちこちに招かれ注目の的となりますし、望めば狩猟祭に参加することもできるのですわ」
その説明にオルシーラは目を瞬かせた。
その心境に比例して、相槌も聞き返す声もどこか戸惑いがちになる。
「あら、ですが……学者の方でしょう?専門的で難しいお話が多いのではありませんか?」
「いえ、これが中々面白いのですよ。
明晰で親切な方は、素人にも分かるように話して下さるものです」
「私も。幼い頃に、課題で分からないところを教えてもらったことがありました。
今年のサロンも楽しみですわね」




