女性の地位
「――お話は分かりました!」
一通り事情を聞いたユミルはふわふわとした金髪を揺らし、曇りない笑顔で答えた。
「まず、婚約者を思う御心は大変尊いものです!
ルーセン殿への根回しをやり遂げ、人前で和議に漕ぎ着けたのも素晴らしい!
一人の人間として、貴方の勇気と愛を心から讃えます!!」
まず彼の行動を惜しみなく讃える。そこには一片の曇りも偽りも感じられなかった。
ここまで真っ直ぐに賛辞を受けるとは思っていなかったらしい。
ブライアンは驚いた後、やや感じ入った様子を見せた。
「その上で僕の意見を言わせてもらうなら、まずはご家族のお許しを得ることが先決だと思います!
ご家族とて、何もブライアン殿が憎くて反対しているわけではないと思います!
説得できたなら、寧ろ強い味方になって下さるでしょう!」
「それは……そうなのですが。どう言っても聞いてもらえず、こうなれば先に他家の方々に認めてもらう他ないと……」
「ルーセン殿に形式上でもお許しを頂いた以上、先日までとは状況が違います!
これほどのことを成し遂げたブライアン殿がそんなに大切に思っている方なら、そしてそれを育て上げたご家族なら、いつかきっと分かって下さるはずです!自信を持ちましょう!」
明るくブライアンを勇気づける声を聞きながら、シノレは口を挟むことはせず、黙って色々考えていた。
主に、教団における女性のことについてだ。
……一連の話を聞きシノレが思った感想は、例に漏れず回りくどい話だということだった。
教団では素行の悪い女性の親類縁者、ましてその子どもは非常に厳しい軽侮に晒される。
血や環境とともに悪性を受け継いでいる、故に婚姻などすれば血脈の汚れとなる恐れがあると見做される。
シノレにはその考え自体がまず驚きであり、異文化であった。
それは傲慢で差別的な決めつけではあるが、しかしそこには一種の承認がある。
女性は家を支え血統を継ぐ役割を持ち、次世代にも影響を与えうる存在であると。
責任を預けられ、それを全うすることを期待されているからこそ、背いた際の罰と反動が大きいのだろう。
楽団ではそんなことはなかった。
楽団では女はただの消耗品、或いは子どもを作るための道具でしかなく、多くの場合そこに自我も力も認められていないからだ。
風評も素行の良し悪しも、そんなものは関係ない。
母親がどういう人間であれ、生まれた子どものどこかに何かしらの影響を与えるなどできようはずもない。
女はどこまでいっても矮小で非力で愚鈍な存在なのだから。それが楽団の価値観であった。
……あそこで女に生まれなかったことは、自分に与えられた数少ない天恵であるとシノレは思っている。
教団ではそんなことはない。
そんなことはないのだが、守られる代償として重い制約を得るのはこうした問題でも変わらないらしい。
自分に非がなくても血縁者の失態だけで被害を受けるとは……血統重視の恐ろしさの一端をシノレは感じた。
様々な枷と誓約を課しながら、それでも社会を維持し助け合いの精神を貫く。
それはそれで、得難い正義や美徳があるのだろう。ただどうしても、息苦しい社会だとシノレには思えた。




