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庶子と三男

……あれこれと、結論の出ない物思いに耽って歩いている内、回廊の端まで来ていた。

穏やかな晴天が辺りを包んでいる。

日差しはそこまで強くなかった。

そして遠くから、赤い髪の少年が歩いていくのが見えた。それについ呟く。


「……あれは……ソリス……」


 来ていたのか、と思った。

こちらに気づいてはいないらしき姿を、エルクは懐かしく見つめる。

見ているだけで、昔のことが鮮やかに蘇ってきた。


子供の頃は遊び相手として、彼と一緒に過ごすことが多かった。

ワーレンとファラード。庶子と三男。

ともに当主になるはずのない者同士、かつてはそこに奇妙な均衡と友情があった。

それがファラード家の先代、更に長男と次男の急逝によって崩れ、昔のように話すこともなくなって数年が経つ。


 悠然とした足取りで進んでいく彼は、今ではもうすっかり当主の顔つきだ。

…………いやそれでも未だに裏では、愚痴と嘆きと現実逃避を書き連ねたよれよれの私信がしょっちゅう来るが。

繊細で臆病で甘え好きな末っ子だった友人は、もうそれを表に出すようなことはない。

 変わらないものなど、きっとどこにもない。

何もかも、変わっていくしかないのだと、頭では分かるのに。

エルクは少しの間、取り残されたような気持ちでそこに立ち尽くしていた。


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