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近衛の女騎士

「あ、あのシオン様が……近衛の女騎士でいらっしゃったのですか」


 思いがけないことだったが、妙に得心する自分もいた。座所や宴で何度か見かけた姿を思い出す。

確かに純情可憐というより、颯爽とか綺麗とか格好いいといった形容の方が似合う女性ではあった。


令嬢たちの熱い視線を、何ならそこらの良家子息よりも多く集めていた記憶があるが……

それにしても近衛騎士とは。教団の騎士階級でも、間違いなく最上級と言える立場だ。

少しの戸惑いを気取られたのだろう。兄の声が僅かな笑みを含む。


「女性、しかも令嬢でそれほどの騎士になるのは珍しいですからね、戸惑うのも尤もです。

ですがシオンは以前、聖者様の護衛にもついてくれていたんです。

武功においても男に劣らず、何より清廉で信頼の置ける騎士ですよ」


「それは……知りませんでした。シオン様が……」


 奇しくも彼ら兄弟が前にしているのも、カドラスを描いた聖画だ。

もしかしたら兄は、ここでそのことを考えていたのかも知れないとエルクは思った。

非礼にならないよう兄に視線を向ける。

その静かな横顔からは、内面にあるものは見えてこない。


「それからザーリア―家のジレスを……ああ、シノレの教育係をしてくれていた者なのですが……彼も加えようと思います。

諸事を鑑みても、彼はあそこにいた方が良いでしょう」


「……あ、はい。そうですね。心得ました。

僕からもご挨拶を申し上げておきます」


「ええ、お願いします」


 それから打ち合わせを簡潔に済ませ、詳しいことは後日書面で送るということだった。

程なくして兄は「もう下がって良いですよ」と言った。


帰路につきながらエルクは、体の力が抜けそうになるのを頑張って抑えていた。

兄との話が何事もなく終わったことに安堵していた。

それに前置きであったとしても、優しい言葉をかけてもらえたのは嬉しかった。


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