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剣を探る

 シアレットに行き着き、落ち着くまでの一ヶ月弱。

その期間は、この剣やそれが巻き起こしたことについて自分なりに考え、咀嚼する時間を与えていた。


 ――思い出すのは、エルフェスでの満月の夜のことだ。

シノレから流れ、剣を辿って溢れ出し、竜を焼き払ってのけたあの光。


 あんな力が暴発でもしたらどうなるのか?そもそもあれは何だったのか?分からないことだらけである。

あれ以来聖者は臥せっていたし、ここに来てからは引っ張り回されている。

そんな状況で詰問しようにもできず、そのままここまで来てしまった。


 ここまでにも色々とあったし、環境も一変したが、何だかんだでこの不気味な剣のことが頭から離れたことはなかった。

考えたり、調べたり、まとめる時間もあった。

その中でシノレは、一つの推論に辿り着こうとしていた。


「…………」


 中にある剣に向けて、力を流してみる。

ぐぐっと迫るような手応えがあった。

更に集中し、力を練り上げて、研ぎ澄ましたそれを近づけていく。


 ばちん、と弾かれたような感覚が走り、跳ね除けられる。

それはなんだか、気難しい大男に喝破されたような感覚だった。

あれから何度となく味わった、はねつけるような拒絶の感触だ。


疲れてぼーっと櫃を睨んでいた時だった。

後ろで扉に近づき、触れる気配がある。

足音で誰かは分かっているので、取り繕う必要はない。


「シノレ、少し…………ああ、剣について探っていたのですか?」

「うんまあ。……ああ、その辺座って。何か用?」


 目は向けずに手で合図して、あった椅子に座るよう促す。

聖者もそれに従い大人しく椅子に座った。

やがてシノレが振り返った時、聖者は椅子の上で端然と背筋を伸ばし、手を膝に置いていた。

その目は、先程シノレが開けた箱に向けられていた。


「……封印を解くのも、上達してきましたね。

手詰まりになることも、最近はないようですし。

次の段階に進んでも良いかも知れません」


「そうだね。慣れて大体分かってきた。それで、それを確認に来たの?」


「……いえ。その、これは、今日あったことですが……オルシーラ姫とのお話の流れで、勇者のことを……つまり、貴方のことについてお話したら。

是非会ってみたいと仰って。もしも良ければ、明後日の宴に同伴して欲しいのですが」


「ああうん……分かった。予定入ってないし良いよ。僕はただ、いるだけで良いんだよね」


「ええ、これまで通りに。いてくれさえすれば、後は私が何とかしますから。

最低限、出席者の方々のお名前だけ覚えて下さればと思います。後で、一覧を届けますね」


 ほっとしたように微笑んだ聖者に、視線を返す。更に話は続いた。


「……それに、もう耳に入っているでしょうが……

以前から開戦を囁かれていたサフォリアとロスフィークが、遂に本格的な戦闘に入ったとのこと。

また地境では、リゼルド様がサダンの攻略を開始なさっているそうです」


 どこも慌ただしい。血腥い。戦とは嫌なものだと思った。

でもそう言っても始まらないので、黙って続きを促す。

聖者は更に、ぽつぽつと言葉を落とす。


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