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封印解除の修練

 もうすぐ月が変わる。

シアレットに来てからそこまでの時間の多くを、シノレは庭や稽古場での鍛錬に費やした。

一方で城の中枢では、日夜宴や茶会が催されていた。

姫の来訪は多少の戸惑いや警戒はありつつも、きちんと受け入れられたようだった。


とにかく、騎士団の姫の受け入れは何事もなく完了した。

そこからは色々繊細な駆け引きなどあるのだろうが、正直シノレの知ったことではない。

シノレが関与したり、口出しできることでもないのだから。

今はそれ以上に重大な、しかもシノレにしかできないことがある。


「…………」


 その日部屋に戻ると、見覚えのない小箱が机に置いてあった。

そこには幾重もの力が取り巻き、絡みつき、縛り上げるように巻き付けられていた。

それが今は、目を凝らさなくても見えた。

聖者が言うところの封印だ。

それを手に取って観察し、解くための手順を考える。


「……まずここから、こうすれば良いのかな……」


 そうやって道筋を組み立てるのも、少し慣れてきた気がする。

こういうことは、最近たまにある。聖者からの課題だ。

恐らく使用人たちによって届けられているのだろう。

聖者に封印解除について教わって以来、シノレはこの修練を続けていた。


 箱と花を傷つけないよう力を流す。

その日の解錠は、それほどかからずに成功した。

手の中の箱が、独りでに開いていく。

この作業にも段々慣れてきた。

シノレの上達に合わせて、封印も複雑になっていく。

中に入っていた花を手に取ると、爽やかな香りがした。


(良かった。上手く行った。……でも、こんなこといつまで続けるのかな)


 目下、気がかりなことは別にある。

花を戻し、箱を置き直した。

後はこのまま普通に蓋をして、箱ごと聖者に返せば良い。


 そしてシノレが見つめたのは、エルフェスで入手した剣と、容れ物の長櫃である。

そこにも、先程までの小箱と同様に封印の結び目が張り巡らされていた。

一つ一つ解いていく。

自分でかけたものなのだから、その流れも淀みないものだ。


最後の結び目を解くと、櫃全体を封じていた力はふわりと解けた。

滑らかな蓋を持ち上げると、黒黒とした剣の輝きが現れた。

柄の部分に手で触れると、凍りつくように冷たい、どこか異様な感触が返ってくる。

どこがどう変とは言えないが、普段身辺にあるものたちとは何か違うのだ。

しかし、それ以上何事もなく済んだ。


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